メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

大阪秋の陣 危うさ秘める橋下流のゆくえ

前田史郎

前田史郎 朝日新聞論説委員

「明治維新でも地方の志士が江戸幕府を倒そうと命をかけた。日本を変えるため、大阪から立ち上がろう」

 10月23日夕、大阪・難波。大阪市長選への出馬会見をした橋下徹氏(42)は、直後の街頭演説で拳を握って絶叫した。前日未明までもつれた大阪府議会での疲労をやや顔に残しながらも、ボルテージはあがっていく。

 「少子高齢化で金は足りないのに天下り役人の給料は増える。ばかげたことをやっているのが日本だ」「今の体制を変えるのか、このままか、二つに一つ」

 郵政民営化で総選挙を仕掛けた小泉元首相を彷彿とさせた。

 橋下氏が知事から市長へくら替え出馬を表明し、40年ぶりに同日投票となる大阪府知事と市長のダブル選。同氏が代表をつとめる大阪維新の会が統一地方選躍進の勢いで両首長をとるのか。独裁を自任する橋下氏が自らの政策に審判を受ける初の選挙でもある。

          ■

 思えば闘いは去年から始まっていた。

 平松邦夫・大阪市長(62)への橋下氏の態度は目に見えて変わっていった。同時期に民間から当選し、当初は「くにお・とおる」といわれる仲の良さだった。

 去年4月、維新の会が府・市再編による「大阪都構想」をめざす方針を示した時のこと。平松氏は「時代錯誤の構想」と批判した。橋下氏はすかさず「政治的に攻撃する」と応酬した。

 5カ月後の意見交換会。「都構想を粉砕する」と意気込む平松氏を、橋下氏は弁護士時代を思わせる一問一答で質問攻めにした。

 最近は2人が同席するたび、周りがヒヤヒヤする有り様だった。

 表向きは都構想での見解の相違が対立要因だ。しかし敵を作って攻撃することで世間の注目を集める橋下劇場で、平松氏がターゲットに

・・・ログインして読む
(残り:約1266文字/本文:約1970文字)