メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ソニーが欠いた「連携」の力

 

小関悠 小関悠(三菱総合研究所情報技術研究センター研究員)

日本でも話題の伝記「スティーブ・ジョブズ」には、何度かソニーの話題が出てくる。その半分はウォークマンなどからジョブズがなにを学んだかという、成功者としてのソニーの話だ。そしてもう半分は、あれだけ優れた製品を開発しながら失敗したのはなぜかという、反面教師としてのソニーの話である。

 かつて、ソニーはアップルの買収を試みたことがあったという。ソニーがVAIOでPC市場に参入するより前、アップルは絶不調で身売りか倒産かと言われていた90年代半ばのことだ。いまアップルの時価総額はマイクロソフトを超え、3700億ドルほどに達し、IT企業で世界一となった。1ドル78円で考えると約29兆円になる。いま、ソニーの時価総額はその約20分の1で約1.5兆円。2010年には反対にアップルがソニーを買収するのではないかという予測もあったほどだ。

 この15年でアップルとソニーになにが起きたのだろうか。アップルの成功を裏返せば、ソニーの失敗が読み取れる。アップルが取り扱う製品はMac、iPod、iPhone、iPad、それからAppleTV程度だ。Mac以外の製品はすべて同じiOS上で設計され、アプリはどれでも同じように動作する。また音楽や映画を購入できるアップルのiTunesストアは、MacでもiPhoneでもiPodでも利用できるし、他社のWindows PCからも利用できる。同社の莫大な収益は、iPhoneやiPadといった人気製品によるものだけではなく、その上で利用できるアプリやコンテンツが次々に売れているおかげでもある。

 一方、ソニーはテレビのBravia、PCのVAIO、ゲーム機のPlaySatation、デジタルカメラのサイバーショットやα、ビデオカメラならハンディカム、ごぞんじウォークマンと、様々な製品カテゴリでブランドを有している。最近ではリーダーという電子書籍端末も展開しているし、タブレット端末のSony Tabletも発売されたばかりだ。スマートフォンのXperiaは、スウェーデンのエリクソンとの合弁会社であるソニー・エリクソンの下で開発されていたが、先日ソニーはそのソニー・エリクソンを100%子会社化することを発表した。デジタル家電でこれほどの種類と量を取り揃えた企業はほかにないだろう。

 しかし、ソニーの商品群にアップルのような連動性は

・・・ログインして読む
(残り:約1086文字/本文:約2068文字)