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ドロ沼化でシーズンの邪魔をするな

松瀬学

松瀬学 ノンフィクションライター

もうじきプロ野球のシーズン開幕だというのに、またもスタジアムの「場外」が騒々しい。朝日新聞が「巨人の高額契約金問題」を連日、1面トップで報じ、巨人の親会社の読売新聞が反論を展開した。論点を整理すれば、問題は(1)巨人の高額契約金がルール違反だったのかどうか(2)巨人の内部文書がどうやって流失したのかどうか――の2点である。

 まず(1)について、朝日新聞の報道が事実とすれば、巨人はドラフト会議の趣旨である戦力均衡をないがしろにしていたことになる。すなわち球界全体で一緒に繁栄していこうという「リーグ」の根本原則を無視し、潤沢な資金力を基に有力新人を集めていたわけだ。

 ただ、これがルール違反かどうかは別問題である。通常、ルールというものは違反すれば懲罰を受けることになる。当時、球界には新人選手の契約金の「最高標準額」の申し合わせがあった。これを朝日新聞が「上限」ととらえ、巨人側は「目安」だったと解釈している。多かれ少なかれ、他球団も最高標準額を超えていたとみられ、罰則を伴ったルールの「上限」ではなかったようだ。

 親しい弁護士によれば、むしろ特別な理由なく、契約金に上限を設定すれば、自由競争を妨げる「カルテル」とみられる可能性もある、と指摘する。つまるところ、巨人の高額契約金は社会常識からは逸脱しているけれど、法律には抵触していないことになる。

 (2)のほうが深刻である。弁護士によると、極秘情報を外部に流した幹部は

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