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無罪判決にみる検察捜査の光と陰

市田隆

市田隆 朝日新聞編集委員(調査報道担当)

政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で強制起訴された民主党元代表・小沢一郎被告(69)に対し、東京地裁が26日に言い渡した無罪判決は、元秘書らと小沢氏の共謀を裏付ける証拠の乏しさから妥当なものだった。

 資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり、検察当局は2010年2月、元秘書から小沢氏への「報告・了承」をうかがわせる証拠はあったが、政治資金収支報告書の虚偽記載についての違法性の認識、共謀を認定できるレベルには届いていないとして、小沢氏を不起訴処分とした。東京地裁判決は大筋でこの判断を支持する結果となった。

 そして、無罪判決は、小沢氏側に向けられた検察捜査が、頂点に届かず、失敗に終わった軌跡を改めて思い出させるものでもある。

 西松建設による違法献金事件の摘発をきっかけに、東北地方の公共工事受注における小沢事務所とゼネコン業界の癒着構造があったことを検察は証明してみせた。検察はその後、癒着構造の中心に小沢氏本人がいるとの疑いを強めた。陸山会の土地取引で浮かび上がった現金4億円が、その解明への入り口になると見立て、元秘書ら3人を逮捕して調べた。結局、その見立てを裏付けるような証拠を得られずに捜査は終了した。

 東北のゼネコン談合組織の中で語られてきた小沢事務所の影響力について、私も1990年代に複数の関係者から情報を得ていた。だが、決定的な裏付け証拠をつかめないまま、何年も過ごした記憶がある。

 独自の調査報道をめざした我々の取材で、ダムなど大型公共事業に絡み、政治家側とゼネコンの間でやりとりされる水面下の資金を突き止めるのは、容易なことではない。このため、検察が、小沢事務所の利権解明に乗り出して成果をあげたことに対しては、今でも高く評価している。

 その一方で、元秘書らと小沢氏の法廷では、最終的に失敗に終わった捜査の陰に、甘い見通しにもとづく強引な取り調べ、実際にはなかったやりとりを記した捜査報告書の作成といった、検察の病巣があったことが露呈してしまった。

 これらは、捜査が難航し、

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