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理解し難い巨人のドラフト戦略 

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 読売ジャイアンツが4月23日にスカウト会議を開き、今年秋に行われるドラフト会議で昨年同様、東海大の菅野智之投手を1位指名する方針を固め、公表した。今シーズンが始まって約1カ月。今年の秋までには時間が充分にある。

 この時点でなぜ菅野投手の指名順位を確認し、あえてそれを公にする必要があるのだろうか。巨人の意図するところは摩訶不思議である。そしてまた、巨人がドラフトの趣旨を逸脱して、なぜリーグ全体の発展(収入拡大と利益向上)を阻害するようなことを立て続けに行うのか、理解するのが難しい。

 ドラフトは、(1)戦力の均衡(2)新人選手の契約金高騰阻止、を目的に、米国のプロアメリカンフットボール(NFL)によって導入された。前年度最下位球団から順次新人選手を選ぶシステム(日本では完全ウェーバー制と呼んでいる)を採用したのは球団間の戦力を拮抗させるためである。具体的には、戦力的に最も弱いところを優秀な新人選手で補うことで各球団は戦力を整えることができる。

巨人に入るために、「就職浪人」している菅野智之投手

 この趣旨に従って、各球団は今秋のドラフト会議までの間、自球団の戦力的弱点を徹底的に見直し、そこを埋めるべき新人候補選手の発掘と調査を徹底的に行うのが普通であり、巨人も例外ではないはずだ。

 ドラフト会議までに、高校では夏の甲子園、大学では秋季リーグ戦、社会人は都市対抗が行われる。甲子園では勝ち進むにつれて能力を高める選手を見かけることが多い。また、甲子園や神宮で出場機会のなかった選手の中にとんでもない逸材がいて、地方に潜んでいることもありえる。どの球団も長い時間をかけて調査し、ドラフト直前まで充分に吟味した上で、ドラフト会議にかける選手とその順番を決めていることを勘案すると、巨人が現時点で1位指名選手を固定するのが賢明なことなのか疑問が残る。

 そもそも、

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