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全体像見えず、説得力乏しい最高検の結論

市田隆

市田隆 朝日新聞編集委員(調査報道担当)

 東京地検特捜部の検事が事実と異なる捜査報告書を作成した問題をめぐり、最高検が捜査・調査結果を公表した。この内容が、「検察への信頼回復」に役立ったかといえば、甚だ疑問だ。かえって不信を強める結果になったかもしれない。

 石川知裕衆院議員の取り調べで、田代政弘検事(45)=6月27日に辞職=に「不適正な行為があった」と指摘しつつ、そのような取り調べがなぜ行われたかの原因、背景事情には踏み込んでいない。全体像が見えないため、取り調べをもとに作られた捜査報告書について「故意にうそを記載したとする証拠はない」とした最高検の結論は、説得力に乏しいのだ。

 小沢一郎・元民主党代表の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件では、石川氏など元秘書の公判でも、小沢氏の公判でも、田代検事らの取り調べが問題視され、裁判官は「虚偽供述に導く危険性の高い違法不当な方法があった」などと厳しく非難した。捜査・調査結果だけで判断すると、取り調べの問題を深く掘り下げる姿勢に欠けているため、検察側がこの非難を深刻に受け止めたとは考えにくい。

 特捜部の捜査は、組織的に行われる。一線の検事は、特捜幹部らが立てた捜査方針に沿って

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