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“黒幕”の幹部の訴追逃れを図った検察

魚住昭

魚住昭 魚住昭(ジャーナリスト)

 日本の検察は万能の権限を持っている。公訴権(不起訴にする権限も含む)をほぼ独占し、独自捜査権まで持つのだからやろうと思えば何でも可能だ。有力政治家を狙い撃ちして政治をコントロールすることもできるし、自らの組織の不祥事を闇に葬り去ることもできる。検察の歴史はそうしたことの繰り返しだと言っても過言ではない。

 10年前の2002年、検察の組織的な裏金作りが三井環・大阪高検公安部長(当時)の内部告発で暴かれそうになったことがあった。検察は領収証を偽造して年間5億円前後の裏金をつくり、歴代幹部の交際費や遊興費に充てていたのだが、当時の検事総長はその事実を全面否定し、三井部長を“口封じ”逮捕してしまった。

 当時の総長は「検察の法灯を守るため に仕方なかった」と親しい記者に漏らしたそうだが、こんな非道がまかり通っていいはずがない。もしこの時、検察が裏金作りの事実を率直に認めていたら、今のように検察の威信が地に墜ちるようなこともなかっただろう。

 今回の虚偽捜査報告書問題をめぐる検察当局の対応も、本質においては10年前と同じだ。田代政弘検事が作成した捜査報告書と、石川知裕衆院議員が「隠し録音」した再聴取のやりとりを詳細に比較すれば、全文約5千字近い報告書の記載の約8割が嘘であることは明らかだ。東京地裁も指摘したようにこんなことが「記憶の混同」で起きるわけがない。

 問題は田代検事が嘘の報告書を作成した本当の理由だ。これは「隠し録音」のやりとりや、石川議員の「獄中日記」を読めば わかることだが、田代検事はかなり有能で良心的な検事である。彼は石川議員の取り調べを通じて、

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