メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

[5]女子SP

村上佳菜子、シーズン最後の完璧な結実

青嶋ひろの フリーライター

 キム・ヨナ(韓国)の鮮やかな復帰には、大きな注目が集まった。

 しかし女子ショートプログラム(SP)のもうひとりのヒロインは、間違いなく日本の村上佳菜子だった。

 彼女は安藤美姫や浅田真央のようなジャンプの大技がないため、技術面で一段落ちる印象をもたれがちだ。しかし小さなころから踊り心はたっぷりで、次代を担う存在としてジュニア1年目から注目を集めていた。「ニューヒロイン登場!」と話題になったころは、「ブームに乗って、あまり騒ぎ過ぎてもかわいそうだ」などと言われることも。

 来シーズンのオリンピックも、浅田、安藤、鈴木明子、そして伸びてくる若手選手たちと競うことを考えれば、村上佳菜子の道のりは険しい。

女子SP自己最高の得点を確認し、山田満知子コーチ(左)と抱き合う村上佳菜子

 そんな彼女が、ショートプログラムで3位。しかもジャンプやスピンなどをジャッジする総要素点では、キム・ヨナを抜いて1位に立ったのだ! 

 勝因は、ショートプログラムでも後半のジャンプの得点が高くなる今シーズンからのルールを、最大限に生かしきったこと。

 ジャンプの失敗が大きな痛手となるショートプログラムで、このルールに挑む選手は多くない。今大会も後半にジャンプを2本入れた選手は、村上を含め35人中3人のみ。難関のコンビネーションジャンプを後半に入れた選手は、唯一村上佳菜子だけだ。

 もちろん、簡単なチャレンジではない。シーズン前半はミスが続き、フリップやトウループの回転不足判定にも悩んだ。さらに昨シーズン苦しんだ靴の不具合も、完全には解決しておらず、全日本まで一度もクリーンなショートプログラムを滑れていない。それでもジャンプ構成を変えることなく攻め続けた末、世界選手権でこの得点、この結果だ。

 「今日は落ちついて、練習通りのことができた、それがいちばんです。ジャンプもスピンも、すごく良かったと思う。そこに点数がついてきてくれたのが、すごく嬉しかったな!」

 山田満知子コーチは、毎年毎年、シーズンごとに必ず新しい挑戦を村上に課す。彼女は泣きながら、コーチにくらいついていく。そんな果敢な挑戦の、シーズン最後の完璧な結実だった。

 またもうひとつの美しい結実は、

・・・ログインして読む
(残り:約1485文字/本文:約2378文字)