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新しい民主主義の始まりとなるか、小平の住民投票

田中敏恵

田中敏恵 文筆家

 その日は雨にも関わらず、400人を収容するホールは立ち見が出るほどの盛況だった。5月11日、「どんぐりと民主主義・入門編」というタイトルで、小平市の道路計画をテーマとしたシンポジウムが同市内で行われたのだ。登壇者は作家のいとうせいこう、人類学者の中沢新一と小平市民でもある哲学者の國分功一郎。主催は「小平市道路計画に住民の意志を反映させる会」と「どんぐりの会」という市民団体である。

 この「小平市道路計画」が、今、大きな注目を集めている。「都道小平3・3・8号線」と呼ばれる道路の計画は、50年前のものが復活したのだという。予定地には市民の憩いの場所でもある雑木林や、玉川上水の一部も含まれる。東京都環境影響調査のデータによると、絶滅危惧種も多く生息するというこの地の自然が破壊されるのは想像に難くない。

 11日のシンポジウムを主催した団体が中心となり、この問題に対する住民投票実現へ向けて動き出した。署名運動では規定数の約2.5倍にあたる7183筆が集まり、3月26日の市議会本会議で住民投票の実施が可決された。今月16日に告示、26日にその住民投票が行われる。都内で直接請求による住民投票が行われるのは、今回が初めてとなる。

 一連の市民運動において、起爆剤となっているのが國分功一郎の存在だろう。先のシンポジウムを仕掛けたのも國分である。彼がこの運動に参加するきっかけになったのは、住民に対する説明会での市の態度であった。

 「2010年に行われたこの道路計画の説明会に参加しました。その時市民からの質問への答えに、質問で返すのは認めないというのです。対話をするつもりがないんですよ」。そんな状況に

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