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TSUTAYAに頼めば万事解決? 公共図書館と出版産業の未来を考える

佐久間文子(文芸ジャーナリスト)

 レンタル大手のTSUTAYAを展開するCCC(カルチュアコンビニエンスクラブ)が運営主体となった佐賀県・武雄市図書館については昨年10月号でも取り上げたが、同館のゴールデンウィーク中(4月27日~5月6日)の来館者数は前年同期比5・71倍の4万7126人だったという。

雑誌売り場のすぐ横にあるテーブルで、飲み物を飲みながら本を読んだり、勉強したりする姿が目立つ=2013年4月7日、佐賀県武雄市雑誌売り場のすぐ横にあるテーブルで、飲み物を飲みながら本を読んだり、勉強したりする姿が目立つ=2013年4月7日、佐賀県武雄市

 4月のリニューアルオープンはテレビのニュース番組でも大きく取り上げられていた。県外からわざわざ見学に来る人も多く、付設の駐車場がいっぱいになっている様子が映し出されていた。

 市の図書館職員は「コンシェルジュ」と呼び名がかわった。この名称は代官山・蔦屋書店と同じである。武雄市図書館の「コンシェルジュ」は、いままでのようにカウンターの中で待つのではなく、来館者に積極的に話しかけていくそうだ。

 予想されたことだが他の自治体の首長や職員の見学も相次ぎ、2年前の震災で図書館が被災した宮城県多賀城市が図書館の運営をCCCに委託する方針だと5月末に報じられた(市は「駅前に移動することは決めているが、運営については未定」)。 こうした動きを受けて、読売新聞(東京本社版)は6月7日、「いま、町の図書館に求められているサービスは何か」をテーマに樋渡啓祐・武雄市市長、元図書館長の山本宏義・関東学院大教授、翻訳権エージェントの仕事を引退してから地元の図書館をよく利用するようになった立場で『図書館に通う―当世「公立無料貸本屋」事情』(みすず書房)を書いた宮田昇の3氏にインタビューしている。

 トップに置かれた樋渡市長の記事の見出しは「TSUTAYAで『革命』」。

 〈これからの図書館に必要なのは大衆化だ。今まで来なかった人にいかにリーチするか〉〈戦後そのままの形では飽きられ、利用者が減り、本を読む人も減る〉と言い、だからこそ、〈居心地のいい空間を作る。「図書館革命」ではなく、「公共空間革命」だと考えて取り組んでいる〉とぶちあげた。

 山本氏は〈安上がりだとか、単純な発想で指定管理者制度を使うことには反対だ〉〈CCCに委託した武雄市図書館は問題が多いと思う〉、宮田氏は〈利用者と対話を重ね、「知のインフラ」存続へ知恵を絞る時期だろう〉などと語っている。

 4月に出た『図書館が街を創る。―「武雄市図書館」という挑戦』(ネコ・パブリッシング)での樋渡市長の発言はもっと過激だ。

 〈いまの公共図書館なんか、実態は官営図書館であって、全然、公共じゃないですよ。そして官営だから面白くない。だから今回の図書館のプロジェクトというのは、私からしてみれば図書館の解放宣言なんです〉

図書館利用者はもともと増えている

 〈面白い図書館〉ができて利用者が増えるならと、テレビの論調も一様に好意的だったが、そんなに単純な話だろうか。

 実際には、

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