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国民に報復受ける「覚悟」を強いる安倍首相

辰濃哲郎 ノンフィクション作家

 国連平和維持活動(PKO)に日本から派遣すべきかどうかの論議が交わされていた91年、中東にPKOの現場を取材に行ったことがある。レバノンに滞在中、南部の村がイスラエル傀儡の南レバノン軍に襲われて何人もの若者が連行された。その村を訪ねると、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)のネパール部隊の基地が村の真ん中にあることに気づく。国連部隊のお膝元で、そんなことが起きるものなのか。村人を守ることはできなかったのか。

 部隊の司令官に話を聞くことができた。南レバノン軍の兵士200人ほどが村を襲ってきたとき、ネパール部隊が手をこまねいていたのには理由があった。ゲリラによる武力衝突が頻発する危険なUNIFILの現場で、派遣された部隊は何度も苦い経験をしている。検問中のフランス部隊が車を制止すると、車内にあった銃を手にした男が見えたので発砲し、2人を射殺してしまったことがある。相手はイスラム系民兵組織アマルのゲリラだった。

 その直後からだ。フランス部隊の検問所やパトロール隊が襲われて、2ヶ月で死者3人、負傷者24人を出した。間もなく、フランス部隊はUNIFILから撤退した。こういった教訓から、ネパール部隊は武器を使って村民を守れなかったのだ。このネパール部隊でも、ゲリラから武器を押収した直後に検問所が爆破され、3人が重症を負った。「中立を守ること、武器を使うことがいかに難しいか」との司令官の言葉が記憶に残っている。PKOの現場では、武力行使によって報復を招き、撤退を余儀なくされている活動が少なくない。

 1日夕、閣議決定された集団的自衛権の容認で、安倍晋三首相は、紛争の「当事者」になることへの覚悟を強いているのだ。自衛のためでも、救援のためでも、

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