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ドキュメント、GPシリーズ・フランス杯中止

号泣する外国選手、発言に気を遣う宇野昌磨……

青嶋ひろの フリーライター

 日本から4選手が参戦した、グランプリ(GP)シリーズ第4戦フランス大会、エリックボンパールトロフィー(フランス杯)。

 11月13日、パリで起きた同時多発テロの影響で、ショートプログラムを終えた時点で中止、という非常に残念な事態となった。現地の状況、選手の様子などをまずはレポートしたい。

中止を発表するフランススケート連盟のガヤゲ会長(手前)の説明に聴き入る選手やスタッフ大会の中止を発表するフランススケート連盟のガヤゲ会長(手前)の説明に聴き入る選手やスタッフ
 テロが起きた13日夜、フランス北西部のボルドーはいたって平静であり、4種目のショートプログラムが滞りなく行われた。男子シングルでは宇野昌磨が1位、村上大介が3位に入り、会場はニュースターの躍進に沸く。

 記者会見でも宇野にたくさんの質問が投げかけられ、彼もしっかりと、メジャーゲームで記者会見に呼ばれる選手にふさわしい受け答えをしてみせる。明日のフリーへの期待は、いやがおうにも高まっていた。

 その夜のうちは、ほとんどの選手、コーチ、関係者、また報道陣もことの次第を知らずにホテルに戻り、ニュースや日本からの連絡で事態を知ったのは、その夜遅く。

 しかし就寝前の報道では、まだ詳しい情報が入っていなかったため、翌日のフリーに影響があるなどとは誰も考えなかっただろう。選手やコーチたちの朝は早い。何も知らずにその日を終えた関係者も多かったはずだ。

平穏だった会場周辺  

 明けて、14日。起床後のニュースで知った犠牲者の数に、まず驚く。ここで初めて、今大会に何か影響があるかもしれない、と、関係者たちはそれぞれの予定を早めてリンクに急いだのだ。

 ボルドーの町、少なくとも会場周辺は、前日までと変わらずいたって穏やかだ。日本からは安全を心配する連絡が次々と寄せられたが、ボルドーはパリから500キロも離れている。この町にいる限り、身の危険はほとんど感じられない。

 変化といえば、警察署の前に銃を構えた軍人がふたり立っていたこと、前日まではなかった手荷物チェックが入場の際、行われたことくらい。それも、ごくあっさりとしたものだ。

 「スケートアメリカの開催地、ミルウォーキーの方が、よっぽど危なかったですね」などと話すカメラマンもいる。

 会場のメリアディックスケートリンクでは、朝7時半スタートの女子の公式練習が平穏に始まる。

 ジャンプの調子が良くて笑顔の選手もいれば、転倒を繰り返して厳しい表情を見せる選手もいる。村上佳菜子や樋口美穂子コーチらも、彼女たちのペースで練習をこなす姿を見て、とりあえずほっとしてしまう。選手たちに精神的な影響がなければいいな、とこの時点では思っていたのだ。

 既にフランス全土に非常事態宣言が出ている状況下で? と思われるかもしれない。しかし、

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