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将棋ソフト不正疑惑が問うゲームの在り方とルール

人工知能と相談しながら戦う「ケンタロウス」型vs.人工知能の対決の時代に

武田徹 評論家

三浦弘行九段が発表した書面=2016年10月18日三浦弘行九段が発表した書面=2016年10月18日
 三浦弘行九段が対局中に将棋ソフトを使用したとし、将棋連盟が年内の出場停止処分を下した。三浦九段は、かねてより不自然に席を立つことが多く、対局中に将棋ソフトを不正使用しているのではないかと不信感を持たれていたという。過去の対局で指し手とソフトが選ぶ手とが一致するのかを調べたところ、三浦九段が勝った20局のうち、4局では、定跡手順を外れて以降の「一致率」が90%を超えたという。

  この処分に対して三浦九段は異議ありとして、パソコンが押収された後に手元に残っていたスマートフォンの調査を解析会社に依頼。将棋ソフトが導入されていなかったこと、対局のあった日の通信量が少ないのがスマホをオフにしていたことの証拠で、対局中に将棋ソフトを使用した事実はないとして、処分撤回を求めている。

  まだ係争中でもあり、ここでは三浦九段が不正をしたかどうかには立ち入らない。ただ三浦九段が不正を犯さずとも、人工知能化する社会の中で、誰かがいつかは不正使用をしていたものだと思う。

機械と人間のゲーム戦争史

  機械に人間の知的活動の一部分を実装させる人工知能技術は原始的なものでは機械式精算装置のレジスターなどがあったが、電子計算機の時代になって飛躍的に進歩を遂げた。専門的な分野で人間をアシストしたり、実際に人間に代わって判断を下したりするプログラムも登場した。

  その実力を試すべく、人工知能と人間がゲームを戦わせる趣向を採った流れはIBMが自社開発の人工知能「ディープブルー」にチェスをプレイさせたことに始まる。1997年に当時のチェスのチャンピオンだったガルリ・カスパロフが「ディープブルー」に敗れ

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