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屋内全面禁煙は小規模店にとって大打撃

日本型分煙を世界に発信していくべきだ

森川進 全国飲食業生活衛生同業組合連合会 会長

 厚生労働省が提案している、飲食店などのサービス業に対し、喫煙専用室以外は禁煙とする「原則屋内禁煙」を一律に適用する規制強化案については断固反対だ。飲食店には個人経営や家族経営などの小規模店も多く、喫煙室を設置するのはスペース的にも資金的にも難しい。そうした事情を考慮せずに一律に適用すれば、結果的に全面禁煙とせざるを得ない業種を中心に廃業に追い込まれる店が相次ぐことになりかねない。

居酒屋や焼き鳥屋にとっては死活問題

WHO生活習慣病予防部長のダグラス・ベッチャー氏。禁煙と喫煙の席の間にしきりがない飲食店を視察した=東京都港区
 特に居酒屋や焼き鳥屋といったお酒と共に食事を提供する店にとっては死活問題だ。たばこを吸う人は全体では2割を切っているが、こうした店の客では4、5割ぐらいとなっているケースもある。いまだ、お酒とたばこ、食事を同時に楽しむ時間を過ごしたいというニーズは大きく、厚生労働省の規制案はそういった実態から鑑みても、経営への影響は計り知れないと言える。総菜や弁当を買って自宅でお酒やたばこと共に楽しむ「家飲み派」が増えることで、外食関連事業者の経営は厳しくなり、また、個人消費の落ち込み等も懸念される。

 すべての飲食店が禁煙になれば、みな同じ条件だから客は減らないという主張もあるが、そうだろうか。資金力やスペースの無い小規模店は結果として全面禁煙で営業せざるを得なくなる。狭い雑居ビルの上層階で営業している店や、自治体が路上喫煙を規制している場合には、さらに小規模店は厳しい状況に置かれる。

 多くの飲食店がひしめく繁華街の銀座エリアでは、条例で路上喫煙が禁止されているにもかかわらず、行政が整備している喫煙所は1カ所もない。お店から何百メートルも離れた場所でないとたばこを吸えない店に喫煙者が来店するだろうか。厚生労働省はそういった切実な業界の不安に対し、真摯に耳を傾け、しっかりと政策に反映すべきである。

日本と海外では事情が異なる

 厚生労働省は海外の事例や論文を持ち出して全面禁煙としても飲食店の売り上げに影響がないと主張するが、極めて疑問である。まず、海外では、お店の一歩外に出た路上での喫煙に制限がない。また、海外における規制内容は全面禁煙を基本としているが、実情はテラス席等を設けて敷地内屋外での喫煙スペースを設けており、事実上、分煙が図られていたのである。事実、大手広告代理店にて、欧州主要都市(パリ、ローマ、ベルリン、ロンドン)で喫煙できるテラス席を設けているお店の割合を調べた調査がある。その結果は、ベルリンが最も多く74.8%で、最も少ないロンドンでも48.8%のお店が喫煙可能のテラス席を設けて分煙を図っているのである。

 一方、日本においては、グルメ情報サイトの調べによると、銀座・新橋と飲食店がひしめくエリアにおいては、わずか3%程度となっている。日本は狭い島国であり、多くの飲食店が商業施設や雑居ビルでテナントとして経営しているケースも多く、

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