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不透明で腑に落ちなかった改元の日程の理由

宮内庁、官邸とも主張の根拠が薄弱 大嘗祭の巨額の公費支出には疑問

岩井克己 ジャーナリスト

 憲政史上初めての天皇の生前退位による皇位継承儀式の準備が本格化した。新天皇の即位と改元の日付も新元号も前もって決められ、現天皇陛下の退位儀式や秋篠宮さまが「皇嗣」殿下の立場になる「新儀」も行われるなど、先例のない歴史的なことだけに国民の関心も高い。

  しかし、平成31年4月30日退位、5月1日に即位・改元が事実上決まった昨年12月1日の皇室会議にしても、政府の「式典準備委員会」(委員長菅義偉官房長官)も、紋切り型のわずかな「議事概要」しか出さないから、政府・宮内庁がどのような考え方でどのような儀式を練り上げようとしているのかが一向に見えてこず、不透明感が募るばかりだ。

  まず改元の日付だが、これまでの西暦換算の煩雑さを思えば、だれもが元日改元が望ましいと考えるだろうが、宮内庁が難色を示し続けた。

  その理由が初めは「年末年始は皇室が多忙だから」だった。しかし、筆者の取材経験では、元日こそ新年祝賀の儀で多忙だが、年末はむしろ恒例の公務や祭祀は必ずしも立て込んでいない。新年祝賀の儀も、由来はかつての「元日朝賀の儀」であり、それは正月即位が慣例だった古代の即位儀の名残りだとの学説も有力だ。

  平成30年暮れに退位関連儀式を行い、平成30年正月の新年祝賀の儀はやめて代わりに即位関連儀式を行えばよかったのではなかろうか。「御世(みよ)始め」を新しい年の初めにことほぐのも国民感情からは自然に受け入れられただろう。

  しかし、宮内庁は年末年始の皇位継承には難色を示し続け、最後は現天皇陛下が1月7日の昭和天皇の三十年式年祭を自ら行いたがっておられると「天皇のご希望」まで持ち出したようだ。なぜ新天皇の主宰で上皇・上皇后も参加する形ではいけないのかの説明も聞こえてこない。

皇室会議に臨む議長の安倍晋三首相(奥中央)ら=2017年12月1日、東京都千代田区の宮内庁特別会議室、代表撮影皇室会議に臨む議長の安倍晋三首相(奥中央)ら=2017年12月1日、東京都千代田区の宮内庁特別会議室、代表撮影
  次善の日付として年度替りの節目の4月1日改元説が有力視されたものの、昨年12月1日の皇室会議の直前になって「3月下旬は統一地方選で慌しい」などの理由で「4月30日退位、5月1日即位・改元」が急浮上した。

  皇室会議の中身も不透明だ。皇族議員から現天皇の昭和天皇式年祭への思いへの言及や、一部議員から元日改元を主張する異論も出たとも伝えられているが、議事の中身は非公開とされ、発表された「議事概要」には影も形もなかった。

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