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関与が焦点だった安倍昭恵氏の痕跡消すため削除か

財務省本省が「通常の処理」らしく書き換え? 問題は財務省への圧力の有無

前田史郎 朝日新聞論説委員

 この1年の国会審議を振り返ると、あまりに空しい。大阪府豊中市の学校法人・森友学園への国有地払い下げ問題で、財務省が決裁文書など重要な公文書を意図的に改ざんしていたことが明らかになった。背景に政治家の関与があったのか、詰めるべきことは多い。だが、これだけは言える。時計の針は昨年2月まで完全に戻された。国会での議論、会計検査院の調査、関係者の国会招致。すべてをやり直すしかない。

消された政治の影

 3月12日に財務省によって明らかにされた改ざん文書は、計14件で、改ざん・削除は約300カ所にのぼった。

 公表された78ページの資料を読むと、交渉の枝葉まで生々しく記述してあることに目を引かれる。

 売買契約に際して作られた「売払決議書」(2016年6月14日付)。改ざん前の文書には、近畿財務局が学園の代理人弁護士と交渉した様子が書かれている。

 小学校の建設予定地から「想定外の生活ゴミ等」が出たことを受け、学園側は、国にごみの撤去を求めた。しかし国側は「予算が確保できていない」と説明する。学園は「本来なら国に損害賠償をするべき」と迫り、「現実的な問題解決策として早期の土地買い受けによる処理案」を提案した。近畿財務局はこれに応じないと損害賠償に発展し、建設中止で「更なる問題発生の可能性」とまで記録し、「提案に応じて価格提示を行う」とある。

  売却の基本事項を記す決議書に、ここまで書くのは異様ともいえる。

 こうした経緯は、野党が交渉の音声テープなどをもとに追及し、おぼろげには浮かんでいた。だが、学園の提案に押し切られるように売却へいたった経過が、具体的な記述で明るみに出るのは初めてだ。

 もう一つ。政治家や安倍首相の妻、昭恵氏らの固有名詞も完全に削除されていた。

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