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国際感覚の欠如を見せた竹田JOC会長の辞任劇

「違法性なし」前提の報告書、質疑なしの7分会見の末に潮目を読み違えて

増島みどり スポーツライター

報道陣に退任を表明後、退席する竹田恒和JOC会長=2019年3月19日、東京都渋谷区
 19日、競技団体、JOC(日本オリンピック委員会)、日本スポーツ協会、全てが入る、いわば日本スポーツ界の総本山「岸記念体育館」(東京都渋谷区)には内外、多くの報道陣が詰めかけていた。東京五輪まで500日を切ったが、報道陣が追う話題は少しも前向きではなかった。

 3年前の2016年から続く竹田恒和・JOC会長(71)の贈賄容疑と退任は、東京への勢いに水を差すばかりか、強くブレーキを踏みこむようなもの。会長は「世間をお騒がせし心苦しい。次代を担う若いリーダーに託したい」と、53歳だった2001年から10期も務めたJOC会長を任期満了の6月に退任する意向を示した。

 父・恒徳氏から引き継ぎ2代に渡ったIOC(国際オリンピック委員会)委員も辞任する。東京五輪招致委員会理事長として13年のIOC総会で東京決定に尽力し、東京五輪大会組織委員会の副会長にも就任。自らも馬術で五輪選手となり、語学や人当たりの良さで日本のスポーツ界の「看板」として活動してきた人物の退任は、日本のスポーツ界のガバナンスやコンプライアンス、リスクマネージメント、さらにJOCが問題に対して適切な対応ができなかった自浄作用と、日本のスポーツ界が抱える様々な問題をもあぶり出す結果となった。

 JOCは6、7月の役員改選を控えており、これまでは竹田会長の続投は既定路線とされた。こうした状況下、また長年トップに君臨し続けた竹田会長を「守ろう」とする内向的思考に対し、五輪というビッグイベントを成功させようと、日本の一般市民や海外に積極的に発信していく外向きのエネルギーは、どう見ても相反しており、そこに生まれた決定的な亀裂が退任を招いた一因となった。

オリンピック運動の価値を損ねた報告書と7分会見

 竹田氏の嫌疑、贈賄のそもそもの始まりは2016年5月に遡る。

 フランス司法当局は、国内に銀行口座を複数持つ国際陸連のディアク元会長と息子パパマッサタ・ディアク氏が、ロシアのドーピングに関し、これを見逃すための賄賂を受け取っていたとの疑惑の捜査を開始。口座がマネーロンダリングに使用されたとして、徹底的に捜査した際、その入金記録に、2020東京五輪招致委員会から招致活動のさなかだった2013年に、息子と深い関係を持つシンガポールのコンサルタント会社の口座に130万ユーロ(約2億3000万円)が振り込まれている事実を確認した。

 招致活動の票集めのための買収にあたる、とするフランス捜査当局に対し、招致委員会の理事長だった竹田氏は送金を認めたが「(招致活動の)正当なコンサル料だ」と、わいろ性を否定。このとき潔白を証明するとして、第三者による外部調査委員会を立ち上げて報告書を作成している。

 最初のミスはこの報告書だった。分厚いが、シンガポールの会社、当事者への聞き取りや詳細なファクトチェックはされておらず、「招致委員会とコンサルタント会社の契約に違法性はなく、IOCの倫理規定には何ら違反しない」と結論付けた。

 しかし、当時この調査会見を取材した記者の間からは「これでは何も明らかになっておらず、竹田さんの主張に沿ったものではないか」といった質問が複数出ている。

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