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出版社が一目置く大阪の詩歌専門書店・葉ね文庫

発行部数が少なく品切れになりがちな歌集や句集の増刷を相談される女性店主

川本裕司 朝日新聞記者

葉ね文庫を訪れた川柳作家の八上桐子さん(右)と話す店主の池上規公子さん=大阪市北区中崎西1丁目

 全国的にも数少ない詩歌専門の書店「葉ね文庫」(大阪市北区)が独自の品ぞろえでファンをつかみ、出版社からも一目置かれる存在となっている。経営するのはウェブ関連の仕事をする44歳の女性会社員。営業は夜間を中心に週4日だけだが、売り上げを伸ばし発行部数が少なく品切れになることの多い作品の「復活」に貢献している。

 葉ね文庫は、古着屋や雑貨店が並び若者の姿が目立つ地下鉄中崎町駅前にある築約60年の雑居ビル1階にある。古書店の経営にあこがれ、短歌好きだった大阪府枚方市の池上規公子さんがかいわいを気に入り、2014年12月にオープンした。著者の知名度にこだわらず、現代詩や短歌、俳句などの新刊書を並べ、古本や同人誌の販売もしている。

出版社からは売れ行き予想の相談

 注目しているのは利用客だけではない。短歌や現代詩のファンをつかむ書店として、池上さんは初版の部数や増刷の可否について出版社から売れ行きの予想を相談される立場になった。

 兵庫県伊丹市に住む八上桐子の初の現代川柳句集「hibi」は、昨年1月に刊行された。「呼べばしばらく水に浮かんでいる名前」という現代詩に近い作風に池上さんが注目し、ツイッターで発信した。葉ね文庫でよく売れ、昨年春には品切れ状態となった。

 版元・港の人(神奈川県鎌倉市)の上野勇治社長は「品切れとなっていた昨年、池上さんに見通しを聞いたところ、『まだまだ売れますよ』と励まされたこともあり増刷に踏み切った」。今年4月に2刷となった。

 15年に客から「西尾さんの詩集、置いてないの」と池上さんは聞かれた。当時は現代詩にあまり詳しくなかったが、西尾勝彦(奈良市在住)の詩集を読んでファンとなり、店頭に並べた。

 品薄となっていた西尾の詩集を16年、東京でのブックフェアに展示したところ、都内の出版社・七月堂が強い関心を寄せた。西尾の過去4冊の詩集に私家版を加えた「歩きながらはじまること」が昨年3月に出版された。通常の2~3倍の千冊を刷ったところ、反響は大きく、4カ月後に千冊増刷した。

 七月堂の後藤聖子さんは

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