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ドーハ世界陸上、競歩初の金2と400㍍リレー銅

全体で入賞は5、来年の東京五輪をどう占うか

増島みどり スポーツライター

男子50㌔競歩で金メダルを獲得し喜ぶ鈴木雄介=池田良撮影

明暗分かれたロード種目とトラック・フィールド

 世界陸上は2年に一度行われるため、五輪の翌年は世代交代が顕著で、五輪前年はオリンピックを予想できると言われる。かつてない猛暑をも「ライバル」としたドーハ世界陸上が10月6日終了し、地元で開催される東京五輪を日本陸上界はどう占えるだろうか。日本陸上競技連盟の麻場一徳強化委員長は全日程を終え「来年につながる成果だったのではないか」と、20年東京五輪への期待を込めて総括をした。

 「ゴールドターゲット」(来年金メダルを狙える種目)として、これまでも実績を築いてきた男子競歩、男子400㍍リレーでは期待通りの結果を手にした。50㌔競歩では鈴木雄介(富士通)が、また20㌔競歩でも山西利和(愛知製鋼)が揃って競歩では初の金メダルを獲得。2011年韓国・大邱世界陸上でハンマー投げの室伏広治(当時ミズノ)が獲得して以来8年ぶり、通算で5、6人目の金メダリストとなり、来年の東京五輪代表にも内定した。競技力に加え、2016年リオデジャネイロ五輪前から、他競技、他種目に先駆けて医科学データをもとに「暑熱対策」を研究、徹底した入念な準備が実った。

 鈴木は、本来スピードを生かす20㌔のスペシャリストで同種目の世界記録保持者でもある。ドーハではライバルを圧倒する自分のペースで飛び出したものの、「それでもいつ動かなくなるか怖かった」と、レース後、多湿の過酷さと距離への不安を吐露した。

 給水ポイントになるたびに、色の違うビニールバッグを取り、袋の中から首の冷却バンド、手のひらを冷却するグリップ型サポーター、保冷剤や氷を入れるポケット付きの帽子(チームでは「あたま氷」呼んでいる)と、手を変え、品を変え、4時間20分ものレース中にも暑熱対策への集中力を失わなかった点も勝因だろう。

 山西はデータに自分の感覚を加え、腹痛などを防ぐためにあえて「体の冷やし過ぎ」に用心したという。日没後の深夜に行われながらも湿度は75%前後と、マラソン、競歩の完走率は史上最低に。多くの棄権者が出る苦しいロード種目で2人の金メダリストと、男子20㌔、女子20㌔競歩で3人、完走率58%の女子マラソンでも、超スローペースに耐える粘りで谷本観月(みずき、天満屋)が7位と合計4人が入賞したのは、東京の酷暑に対するシミュレーションでも好結果だったといえる。

 一方スタジアムで行われたトラック・フィールド種目での入賞は、男子走り幅跳び・橋岡優輝(日大)の8位(7㍍97)のみと寂しい結果に終わった。

日本の伝統的な種目で見えた「兆し」、DNAをどう生かしていくか

 前回ロンドン世界陸上と同じ銅メダルを獲得した男子400㍍リレー(決勝は多田修平、白石黄良々=しらいし・きらら、桐生祥秀、サニブラウン・ハキ―ム)は安定したレース運びを見せたが、トラック種目の決勝進出は9秒台が揃った100㍍でも達成できなかった。フィールドでは、走り高跳び、棒高跳びとも3人のフルエントリーをしながら1人も決勝に進めずに終わった。女子では、5000㍍で決勝に進出した(1万㍍は予選が実施されない)田中希実(豊田織機TC)が15分00秒01と自己新をマークし(日本歴代2位)14位と、20歳の可能性を示したが、女子は総じて苦戦を強いられた。

 しかし、わずかでも「兆し」となるものは伺えた。

 走り幅跳び8位の橋岡は、城山正太郎(ゼンリン、ドーハは7㍍77で11位)とともに日本記録を更新して世界陸上に臨んでいた。指導するのは森長正樹(日大教授)で、2人の前の日本記録保持者。これまでの最高位は森長が1997年アテネ世界陸上で記録した9位で、わずか1つとはいえ「師弟」が22年をつないだ8位入賞には価値がある。

 かつては、

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