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「私、#MeTooの味方です」

僕は自信をもってそう断言する

赤木智弘 フリーライター

なぜ#MeTooは世界を覆い尽くすべきなのか

 日本で#MeTooのムーブメントがあったのはいつ頃の話だろうか。

 #MeTooは一時期、一斉を風靡し、世界中の女性達が立ち上がり、性被害の告発を繰り返すことにより、世の中のセクハラ男を震え上がらせ、世界は大きく変わるはずだった。しかし少なくとも日本では、もはやTVメディアで#MeTooが取り上げられることはなくなり、ときおり女性向けのWebメディアでその文字を見かける程度になった。

性暴力に反対する「フラワーデモ」では、参加者らが「#MeToo」などのメッセージを掲げた=2019年9月11日、長野市

 実を言うと、僕は#MeTooのムーブメントに対してとても期待をしていた。そして僕は今でも#MeTooが世界を覆い尽くすべきだと考えている。今回、あらためて「なぜ#MeTooは世界を覆い尽くすべきか」を考えてみたいと思う。

 さてまずは、どうして#MeTooのムーブメントは、少なくとも日本では廃れていったように見えるのだろうか?

 最初に、#MeTooが含む「ブーメラン要素」が、#MeTooへの関心が失われる原因となったということが考えられる。ハリウッドの大物プロデューサーから性的暴行を受けたと主張した女優は#MeTooの旗手として持ち上げられたが、過去に年下の男性俳優への性的暴行の疑惑が報じられた。

 日本でも、かつて所属した会社の男性上司を#MeTooした女性作家が、動画などで童貞いじりをしていたことが発覚するなど、被害者と思われた女性が、一方では加害者であったのではないかと騒がれた。その結果、過熱する#MeTooブームに水が差されたのである。

 このことをあざ笑ったのは#MeTooブームに戦々恐々としていた男性たちかもしれないが、一方で最初は#MeTooを賛美していた女性たちも、#MeTooの面倒くささに気づいたのではないだろうか?

 #MeTooブームが来る前、日本の自称フェミニストたちに広く使われていたのは、僕が名付けるに「YouToo(お前も!)」とでもいうべきやり方だった。

 女性が男性から性的被害を受けたときに、その加害と全く関係ない男性に向かって「お前も同じ男なのだから、性加害者予備軍だ!」と罵ることを指す。

 いわば「個人の女性が、個人の男性に受けた、性的被害の事実そのものを問題にする」のではなく、「個人の女性が受けた被害を、ホモソーシャルという男性が公的分野を独占する社会によるミソジニー、すなわち女性憎悪が根底にあると考え、ホモソーシャルの構成員たる、すべての男性の価値観を問題視して糾弾する」という手法である。

 もっと簡単に言えば「女性が性的被害を受けるのは、すべての男が私達を見下しているからだ」という考え方がYouTooなのである。YouTooはとんでもなく簡単である。とりあえず「男が悪い」と言っておけば、同じYouTooの価値観を共有した同士で、簡単に共感が得られるのである。

 「私が痴漢されたのは男が悪いからだ」「私が会社でセクハラを受けるのは男が悪いからだ」「私がTwitterで批判されたのは男が悪いからだ」なんでもかんでも「男が悪い」で話が成立してしまう。

 しかしその一方で、YouToo勢力の間では通用しても、一般社会では一切通用しない。

強者男性と「YouToo勢力」の相互補完関係

 例えば痴漢の問題を考えても、たとえ女性の9割が過去に痴漢の被害にあったことが事実だとしても、それが「9割の男性が過去に痴漢をしたことがある」という事実を表すわけではない。だから「私が痴漢されたのは男が悪いからだ!」と叫ばれても、世間一般の男としては当然「痴漢をするやつが悪い。男全体が悪いわけではない」というごくごく当たり前の結論を返すしか無い。

 だが、YouToo勢力は、こうした当たり前の結論を「Not All Menだ!」などとして、結論の受け入れを拒否してしまうのである。

国会内で開かれた集会の会場に掲げられた横断幕に書かれた「#MeToo」の文字=2018年4月23日

 しかしこの「Not All Men」というのもおかしな話である。

 黒人がレイプ事件を起こしたとして、別の黒人が「すべての黒人がレイプをするわけではない」という当たり前の主張をしたら、それも「Not All Black」

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