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Bリーグ・大河チェアマンが任期途中で辞任、難局での新チェアマンに期待

増島みどり スポーツライター

Bリーグの大河正明チェアマン

異例のオンライン会見で明かした、辞任の理由とは

 日本スポーツ界に新風を吹き込んだ男子プロバスケットボール「Bリーグ」の大河正明チェアマン(61)が5月26日、辞任会見を行った。2015年当時、分裂状態にあった国内リーグの統合を進め、日本バスケットボール協会事務総長からチェアマンに就任。国内ではプロ野球、Jリーグを追う、新しいプロスポーツの誕生をけん引し5年、チェアマンとして3期目、21年秋まで任期は残っている中での退任となった。

 現在、事務局はリモートワーク中で、辞任を承認した理事会も、会見もオンラインでの実施に。収入の見込みも、事務局の運営も全く先が見通せなかった5年前から、定着させるまでに成長させただけに、本来ならば多くの人を集めて行う会見だろう。記者から、オンライン会議システムのチャット機能を使って質問を受け付けるという、何とももどかしい、同時に、コロナと共存する新たな時代を象徴するかのような会見となった。

 任期途中での辞任理由について、Bリーグの前にはJリーグに関わるなど、長年スポーツの現場に携わってきた経験から得た危機感を引き合いに説明した。

 「私の思いとして、長期政権というのは権力が集中し、私に対して何も言えない、忖度が働くなどガバナンスの欠如があってはいけない。スポーツ界が脆弱だった部分で、いつも頭において全力疾走してきた」

 もともと、男子は国内に2つのリーグが存在するガバナンス上の不備からスタートしただけに、3期目に入ったとはいえ、同じガバナンスでの過ちは繰り返さないようにとの問題意識がいかに強かったかをうかがわせる。チェアマンという任務について、クラブの社長との違いを引き合いに「クラブの社長は(任期の長さで)名物社長になる。ただBリーグチェアマンの仕事は、リーグの仕組みを作り、発展に貢献しなくてはならない。サラリーマンの社長に似ているかもしれません」と、元銀行マン(三菱UFJ銀行)らしい解釈で持論を示した。

 問題が何か生じる前のリスクマネージメント、自身の個性よりもサラリーマンの信義、築いてきたキャリアと立ち位置を強調した辞任理由とともに、重要な動機も明らかにしている。

コロナ禍で、一定の道筋立てた

 大河氏は、昨年自身が掲げた2026年までの中期計画で今年が第一段階の終了となり、今年で契約が終了するスポンサーとの次期契約にも目途を立てた。コロナ禍で3月に中止を余儀なくされたリーグの運営でも、安定した資金の借り入れを行えるという。「リーグからの配分金で、1チームも潰れず1年間は過ごせる」と、苦しいシーズン下で資金のサポートへ一定の道筋を立てた点も退任の動機になったようだ。

 各クラブが6月の決算を控え、大半が赤字に追い込まれる非常事態のなかでの退任には、不安を募らせるクラブも多い。来年に延期された東京オリンピックに、1976年モントリオール五輪以来の出場を決めた男子にとって、スケジュールを含みプロと協会の強固な連携も不可欠だ。様々な背景を加味すると、急な辞任には違和感も残る。こうした声を踏まえ、新しいプロリーグが成長の動きを止めないよう、26日の会見では、次期チェアマンも同時に発表された。

 B1(1部)に所属する「千葉ジェッツふなばし」代表取締役会長の島田慎二氏(49)が、大河氏の退任に伴い次期チェアマンに選出された。選考は野宮拓弁護士を座長に、

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