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コロナ危機でますます困窮する難民をどう支えるか~支援の現場から

誰も取り残さず、誰も排除しない社会をどうつくるか?

石川えり 認定NPO法人難民支援協会代表理事

 「持っているお金は30円しかない」
 「泊まる家がなく、公園で寝泊まりしている」
 「昨日から何も食べていない」
 「高熱があるが、健康保険に入っていないので病院に行くのを控えている」

 これらは、コロナ禍により新たに寄せられた相談ではない。紛争や迫害から日本へ逃れた難民から、ずっと寄せられてきた声である。

 私たち難民支援協会(JAR)は1999年の団体設立以来、このような人々へ支援を提供してきた。20年以上に渡って難民支援に携わってきた筆者だが、コロナ禍により彼らの脆弱性がより高まっていると実感している。

 新型コロナウィルスの影響は、社会の中で弱い立場に置かれていた人たちにより顕著に現れている。本稿では、日本に逃れた難民が置かれている現状と背景、それに対する難民支援協会の支援活動と問題意識を伝えたい。

Woodhouse/shutterstock.com

立場が多様な日本の難民・難民申請者

 現在、日本には数万人の難民・難民申請者が暮らしている。その立場は多様だ。

 難民としてすでに認められ、日本人とほぼ同様の権利を持つ人。難民申請の審査中で在留資格がある人は、2カ月、3カ月の短期滞在者、6カ月の中期滞在者まで幅がある。在留資格がなく収容施設に収容されている人。もしくは収容されず仮放免という立場の人もいる。仮放免となると就労が認められず、国民健康保険にも加入できず、政府支援もほとんどなく、生きていく術は限定的となる。

 コロナ禍は、もともと困難な状況にあった難民に追い打ちをかける。これまでは就労資格を得て自立できていた人も、就業形態によっては、減給や失業といった打撃を受けているのだ。

コロナ危機下の難民の実情

 難民支援協会が把握している中では、早々に影響を受けたのはホテルや飲食業でアルバイトや契約社員として働いていた難民だ。3月上旬頃から「仕事の時間をカットされて収入が減っている」という相談がくるようになり、「これまでフルタイムで働いていたホテルの仕事は日に日に時間が削られ、とうとう1日も出勤できなくなってしまった。」という悲痛な訴えを電話口で聞くことも増えた。

 時短や減給に遭ったある難民は、「シフトが減る中でずっと他のアルバイト探しを続けていたが、国籍や日本語レベル、高齢を理由に、採用されることは難しい。ようやく見つけた工場の仕事も、週2日~4日で、当日に電話が来る」と先行きが見えない不安を語った。「仕事をなくして家賃を払えなくなってしまい、とりあえずは待ってもらっているが、2週間以内に払えないと今度は出ていかなくてはいけない。」という相談もあった。失業から自宅を失う寸前の人や、すでに失った人がもいる。

 仮放免などで就労許可がないことや、体調が悪いといった理由で就労ができない難民申請中の人たちもいる。こうした収入の途がない難民申請中の人への政府の支援金は限定的なため、彼らはモスクや教会といった宗教上のつながりや、友人・知人・近所の人を中心とした個人的な人間関係に支援を頼る場合が多い。

 しかし、コロナ禍により、個人による支援も弱体化しつつある。「働いている知人や友人に頼んで少しずつお金を借りていたが、彼らも失業してしまい一切の収入が絶たれてしまった。もうガス代も電気代も払えない。食べ物も何もない、お米がもう少し残っているだけ」という相談からは、彼らを何とか支えていた命綱が途切れ、非常に困窮していることが明らかだ。

 民間の支援団体や宗教団体を頼る人も多かった。しかし、三密を避けるため、宗教施設も閉じられており、集い、祈ることもできず、宿のない人が寝るための場所を提供されることも、今はかなわない。

難民受け入れの厳しい現状

 彼らが追い詰められる背景には、日本の難民受け入れの厳しい現状がある。

 難民とは紛争や迫害のおそれのために、故郷から逃れざるを得なかった人である。たとえば、独裁政権下で民主化運動に参加したことで投獄された人、国から認められていない宗教に改宗した人、同性愛者など性的マイノリティであることを理由に死刑を含めて罰せられる可能性がある人などで、現在、避難を余儀なくされている人は世界で7000万人以上いる。

 日本へ逃れている人も少なくない。日本の難民認定率が低いことは、よく知られているが(参考)、難民申請中の人たちがどのような生活を送っているかは、十分に知られていないように思う。

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