メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

環境省が秘密裏に進める「汚染土で野菜栽培」

放射性物質で汚染された土壌が国民の知らぬまま利用可能となる危険

大島堅一 龍谷大学政策学部教授 原子力市民委員会座長

 東京電力福島第一原発の事故で、敷地外の土壌が広範囲に汚染された。

 放射性物質で汚染された土壌を剥ぎ取ることを「除染」という。環境省は、除染で剝ぎ取って袋に詰めた土(除去土壌)を、袋から出して利用する 計画を進めている。

 環境省は、除去土壌をそのまま使うのではなく、汚染されていないきれいな土で覆土して利用するとしてきた。これまでは園芸作物・資源作物で使用するとしており、筆者は注目していたところであった。

 そこにきて、2020年5月1日に行われた記者会見で、小泉進次郎環境大臣が、飯舘村長泥地区での実証事業で「これまで行ってきた花や資源作物の栽培に加えて、震災前に住民が栽培していた食用作物の試験栽培も実施する予定であります」と記者会見で言っているのを目にすることになった。

原発事故による除染で出た土を農地に再利用する実証事業を視察する小泉進次郎環境相(中央)=2020年2月、福島県飯舘村

 この件に関する詳細な情報は、環境省ホームページに存在していなかった。具体的な内容を知るべく、筆者は行政文書の開示請求を行った。

 そこで分かったのは、環境省が、覆土した状態で野菜を育てるだけでなく、覆土無しでもキャベツとインゲンを栽培する実証事業を行うということだった。

 このことは一般には知られていなかったため、筆者が入手した資料を基礎に、2020年8月8日、共同通信がこの事実を報じることになった。また、NHKや朝日新聞、河北新報、東京新聞も覆土無し栽培のことを伝えた。

飯舘村での「除去土壌」の「再生利用」

 飯舘村長泥地区は、福島原発事故後に設定された帰還困難区域にある。

 ここでは、汚染しているため剝ぎ取った土「除去土壌」を「再生利用」するための実証事業が行われている。「実証事業」は、物事を実現させるために安全性を確認するための実験と言ったほうがわかりやすいかもしれない。

 「除去土壌」も紛らわしい言葉である。

 「除去土壌」とは、福島県で実施した除染作業で剥ぎ取ったもので、放射性物質で汚染されている土のことである。新聞やテレビでは、「除染土」または「汚染土」と言われることもある。

 今回の食用作物の栽培は、「除去土壌」の「再生利用」の一環である。今まで、環境省は、「除去土壌」の再生利用を、食用作物栽培を覆土無しで実際に進めると公の場で詳しく説明したことはなかった。

 環境省が進める「除去土壌」の「再生利用」とは一体何か。

 東電福島原発事故によって広い地域で放射性物質による汚染が広がった。放射性物質で土地が汚染されると、放射性物質だけを土地から取り除くことはできない。そこで、土壌から汚染された土壌を剥ぎ取り、運び出す作業が国によって進められた。

 これが除染である。

 土壌を剥ぎ取るのだから、当然、大量の「除去土壌」が発生する。「除去土壌」の量は、福島県内で1400万立方メートルに及ぶ。これを全て最終処分しなければならないとすれば、量が多すぎる、と国は考えた。

 そこで、これをできるだけ少なくしようというのが「再生利用」の目的である。

環境省の実証事業としてつくった農地ではキュウリやミニトマトが実をつけていた=2020年7月10日、飯舘村長泥

・・・ログインして読む
(残り:約4458文字/本文:約5741文字)