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小池百合子知事が招いた朝鮮人犠牲者追悼式典の異様な光景

関東大震災97年、東京・横網町公園で

市川速水 朝日新聞編集委員

いくつかの不審な動き

 関東大震災から97年後の2020年9月1日、東京都墨田区の都立横網町公園で、朝鮮人犠牲者追悼式典が執り行われた。震災直後の混乱で虐殺された朝鮮人や中国人、日本人運動家らを悼んで日朝協会などの実行委員会が毎年、催している。

 公園中央の都慰霊堂のすぐ脇の小ぶりな碑の前。例年、500人程度の人が参加するが、今年はコロナ感染拡大対策で、一般参加者の入場は遠慮してもらい、式の模様はオンラインで生中継された。

朝鮮人犠牲者追悼式典。コロナ対策で「三密」を避けるため、報道陣ばかりが目立った=2020年9月1日、東京・横網町公園、筆者撮影

 今回、式典のあり方をめぐって事前にいくつかの不審な動きがあった。

歴代都知事がこの追悼式に寄せていた「追悼の辞」の送付を、小池百合子都知事が4年続けて拒否したこと。
朝鮮人虐殺を疑問視する団体が昨年、同じ公園で同時刻に会合をぶつけてきたが、この団体の発言が都に「ヘイトスピーチ」と認定されたのに、今年も都はその団体に近くで開催することを許可したこと。
それに先立ち、長年やってきた実行委員会に対して、都が「参加者に管理の支障となるような行為をさせない」などの誓約書を提出させようとしたこと、都に抗議が集まると、誓約書の要求が撤回されて公園使用が認められたこと。

 追悼式典が始まったのは午前11時。その風景はきっと、事情が分からない人にとっては、不気味で不可解なものだっただろう。いつもの実行委員会の式典と、虐殺を疑問視する団体の式典の距離はわずか約20メートル。しかし、間には緑色のフェンスがぐるりと張られ、行き来しようと思えば左右、数百メートル迂回していかないとたどりつけない。フェンスの両側には警視庁の警官と都庁職員が数メートルごとに配置されている。

追悼式会場を取り囲む緑色のフェンスと警官=2020年9月1日、東京・横網町公園、筆者撮影

守られているのか監視なのか

 集会は、守られているのか監視されているのか、分からない状態で取り巻かれながらも予定通り行われた。一般参加者がほぼいなかったため、会場はメディア関係者ばかりが目立った。途中、反対する団体側から大声が上がる騒ぎがあったが、すぐに取り押さえられた。

 都立公園で、都が公認する碑の前で追悼式をやっているのに、警視庁と都職員がじっと囲む。一方で都知事は追悼文の送付を拒み、各参加団体が知事を批判するという異様な光景だった。

 このちぐはぐな風景を招いたのは、小池都知事の姿勢が発端であることは間違いない。

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