東京・目黒区の人口が消滅しても、早期抑制が見込めない理由
2020年12月09日
12月2日、米国のCOVID-19(新型コロナウイルス)による死者はこの1日で2885人と報告された。このウイルスによる死亡者の総数は28万人を超えた。過去9か月の間に、東京都の目黒区の総人口が消滅したと考えると、米国の感染状況の深刻さが実感できるだろう。
これほどの状態になっても、米国にはまだまだこのウイルスの脅威を深刻に受け止めない人々は少なくない。
10月にはトランプ大統領本人も感染し、メラニア夫人を始めとするホワイトハウスの関係者の間で集団感染が起きた。だがもちろん、これらのVIPはトップクラスの医療関係者によって手厚くモニターされ、一流の医療機関で治療を受けてきた。わずか数日で退院し、「COVIDなど恐れるな」と大統領自身が発言したことは、現在もトランプ支持者たちのCOVID-19軽視の姿勢が変わらない原因の一つであることは、間違いない。
CDC(疾病予防管理センター)の統計によると、現在、人口比でCOVID-19による死亡者がもっとも多い州トップ10のうち7州が、トランプ大統領が選挙で勝利を収めた州である。それはもちろん、偶然ではない。
12月5日には上院議員の決選投票の応援でジョージア州入りしたトランプ大統領が集会を行い、その聴衆の多くが未だにマスク無しで、密集している様子が報道された。
どうして彼らはここまで頑なに、マスクを拒否し、COVID-19を軽視するのだろうか。
ニューヨーク周辺に住む筆者の知り合いの、トランプ支持者たちに質問をぶつけてみた。
「ここは民主主義の国家でしょう。どうしてマスクなど強制されなくてはいけないの」
そう主張するのは、イタリア系アメリカ人のパトリシアだ。事務職から引退し、現在は同じく定年退職した夫と二人でクイーンズ区とロングアイランドの境目に住んでいる。育った家庭も、夫も、共和党支持者であるという。
彼女のように、「マスクをしない自由」を主張するトランプ支持者は多い。「小さな政府」を提言する共和党支持者は政府によって個人の権利が制限されることに、極端な拒否反応を示す(だが人工中絶の違法化は支持するという矛盾を抱えているのだが)。
「でもパトリシア、運転するときに、シートベルトは締めるでしょ?」
「もちろん」
「ではなぜ、マスクにはそんなに拒絶反応をするの?」
「だってマスクは付け心地が悪くて、息苦しくなるもの」
こういう人々に、マスクは自分のためだけではなく、他者への感染を予防する意味もあるということを説明すると、必ず次のような返事がある。
「だって私は健康よ。ウイルスに感染していないから、他人にうつす心配はないわ」
だがCOVID-19は感染しても、無症状の人もいる。感染の自覚がない人々が、スーパー・スプレッダーとなった例は少なくない。その事実を指摘すると、今度は否定根拠の第2段階へと進む。
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