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トランプに扇動された支持者の暴走で、共和党議員の予言が現実に

「トランプを選んだら共和党は破滅」、そして「トリプルブルー」の成就

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 「もし我々がトランプを代表に選んだら、我々(共和党)は破滅させられる。そしてそれは自業自得なのだ」(リンゼイ・グラハム、2016年5月3日付のツイッターより)

 2016年の大統領予備選を前に、サウスカロライナ州共和党上院議員のリンゼイ・グラハムがツイッターでつぶやいたことが、4年半の年月を経て現実のものになった。

 1月6日の午後、信じがたいニュース映像が配信されてきた。

 首都ワシントンD.C.の連邦議会議事堂で、11月の大統領選挙で勝利したジョー・バイデン氏の当選を公式に確定させる上下両院合同会議中に、トランプ支持者たちのデモ隊が議事堂に乱入したのだ。

アメリカの首都ワシントンの連邦議会議事堂前に集まったトランプ大統領の支持者たち=2020年1月6日、ランハム裕子撮影アメリカの首都ワシントンの連邦議会議事堂前に集まったトランプ大統領の支持者たち=2020年1月6日 ランハム裕子撮影

 トランプ大統領の選挙スローガン、MAGA(メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン)の帽子を被り、Trumpと書いたTシャツを着た支持者たちが議事堂に押し寄せ、窓を割って中に侵入する様子がニュースに流れた。

 会議は中断されて議員たちが避難した間に、侵入者たちは内部で略奪、破壊行為を行い、セルフィーを自慢げにSNSに配信。だがこの暴動で、警官に撃たれた元空軍所属の女性1人と、持病などで体調不良に陥った3人、暴徒との乱闘で負傷した警官1人の合計5人が死亡。当日出た逮捕者は52人だった。

 乱入したトランプ支持者の中には銃を所持していた者も多く、建物内にいた上下両院議員たちに危害が及んだ可能性を考えると、警備も対応も驚くほど手ぬるかった。その翌日の7日夕方に、議会警察長官の辞任が発表された。

BLM抗議デモとあまりにも違う対応

連邦議会議事堂に集まったトランプ大統領の支持者たち=ランハム裕子撮影連邦議会議事堂が占拠されるという異常事態に=2020年1月6日 ランハム裕子撮影

 それにしても2020年の春にD.C.でも行われたBLM(ブラック・ライブズ・マター)デモ抗議の対応と比べてみると、「法と秩序」を掲げたトランプ政権の偽善ぶりがよくわかる。

 BLMのデモ行進では6月1日だけでも、289人の逮捕者が出た。その大多数は武器も所持せず、きちんとマスクも着用して平和に行進する人々だった。それにもかかわらず、州兵たちは近距離から催涙弾、ゴム弾を発射し、無抵抗の人々に殴りかかり、大勢の負傷者が病院に運ばれた。

 さらにまた、報道パスを下げて撮影していたテレビのロケ隊も、州兵らのターゲットにされて襲撃され、失明した被害者も出ている。これは平和的集会、報道の自由を保障する、アメリカ合衆国憲法修正第1条に明らかに違反する行為だった。

 対して今回のトランプ支持者たちは、大多数がノーマスクの状態で密集。そしてほとんど阻止されることなく、簡単に議事堂に乱入している。中には能天気に、議事堂内部の写真をSNSにあげて自慢する支持者もいた。だがその後、口から血を流して助けを求める警官、暴徒に襲われて機材を破壊されるニューヨーク・タイムズのカメラマンなどの映像が流され、次々と酸鼻極まる暴挙の実態が明らかになっていった。敷地内では2つのパイプ爆弾と、多数の武器が積み込まれた車も発見された。

 ここまで来れば、もはや抗議活動ではなく、明らかな国家に対するテロ犯罪行為である。それを考慮すると、これだけの騒ぎで当日の逮捕者がたった52人というのは、驚くほど低い数字ではあった。現在FBI(連邦捜査局)介入の下、映像に映っていた暴徒たちの身元が明らかにされていくにしたがって、逮捕者は増えつつある。

 集まったトランプ支持者の大多数は白人男性だったが、同じ人数の黒人が武装して、会議中の議事堂前に集結していたら、

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