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Fridays for futureに対する弾圧に抗議します(下)

「気候正義運動」は自然保護運動に留まらない

田中駿介 東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻

Fridays for futureに対する弾圧に抗議します(上)

 (上)で触れた、インドの「Fridays for future(未来のための金曜日)」の運動家が逮捕された事件は、「資本」と「国家」がラディカルな気候変動運動を警戒しているという事実を顕在化させたといえます。フライデーズ運動が問いかけるものは、単に自然保護のみに留まりません。

 (下)では、ドイツでのデモ参加経験をもとに、世界的に盛り上がる「気候正義運動」が問いかけるものについて改めて検討していきます。

フライデーズ運動のデモに参加する若者たち=2019年8月、ドイツ・ベルリン、筆者撮影フライデーズ運動のデモに参加する若者たち=2019年8月、ドイツ・ベルリン、筆者撮影

 筆者は2019年8月いっぱい、日独協会が主催するホームステイ事業に参加し、ベルリンに滞在した。そこで目にしたフライデーズ運動のデモは大変印象的なものだった。

 8月16日に行われた集会には、スウェーデンの若き活動家、グレタ・トゥンベリさんに共感する多数の若者が集っていた。話を聞いてみると、運動の中心を担うのは14~15歳であった。

ベルリンで聞いたシュプレヒコール

 彼ら/彼女らは、以下のシュプレヒコールを口にしながら、ベルリンの目抜き通りをデモ行進した。

 「What do we want? Climate Justice! When do we want it? NOW!」(我々が求めるものは何か?気候正義だ! それはいつ?今こそである!)

 「We are unstoppable, Another world is possible!」(我々は止められない、世界を変えることは可能なのだ)

 筆者が驚いたのは、街宣の開始時間が平日の正午、デモ出発が13時に設定されていたことだ。この運動の主眼は、学校をストライキすることにあるのだ、ということを実感した。

 実際、こんなシュプレヒコールも叫ばれていた。

 「Skip hat Recht!」(欠席は正義である)

フライデーズ運動のデモに参加する若者たち=2019年8月、ドイツ・ベルリン、筆者撮影フライデーズ運動のデモに参加する若者たち=2019年8月、ドイツ・ベルリン、筆者撮影

 学校を欠席してまで運動に参加するのは、いったいどんな問題意識によるのか。彼ら/彼女らの視座にあるものが、環境保護・エコロジーのみに留まらないということは、バリエーション豊富なそのシュプレヒコールからも明らかである。

 「A-Anti! Anticapitalista!」(資本主義反対)=オキュパイ・ウォールストリート運動で使われたもの

 「Hoch die Internationale Solidarität!」(国際連帯を高らかに)

「石炭ではなく、金を燃やせ」

フライデーズ運動のデモで、「石炭ではなく、金を燃やせ」というプラカードを掲げる女性=2019年8月、ドイツ・ベルリン、筆者撮影フライデーズ運動のデモで、「石炭ではなく、金を燃やせ」というプラカードを掲げる女性=2019年8月、ドイツ・ベルリン、筆者撮影
 斎藤幸平は、レスター大学で教鞭をとるキア・ミルバーンが提唱した「ジェネレーション・レフト」という概念に着目したうえで、グレタさんをはじめとする世界中の若者たちが共同執筆し、欧州連合(EU)や加盟国の指導者に送った気候危機についての公開書簡(注1)を「明確な、ジェネレーション・レフトによる反資本主義宣言」だと位置づけている(注2)

 実際に、筆者が参加したベルリンのフライデーズ運動では、「石炭ではなく、金を燃やせ」というプラカードを掲げる女性がいた。そうした光景を目にするなかで、展開されている主張が、環境負荷がかかる発電方法をとりやめることへの訴えにとどまらず

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