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サッカー日本代表国際試合9連戦が示す、感染予防対策の課題

「ドドドド怒涛」の日々を五輪本番に活かせるか

増島みどり スポーツライター

 日本サッカー協会が、キャッチフレーズを付けて機運を盛り上げてきた「ドドドド怒涛の9連戦」(ジャマイカ戦1試合はキャンセル)が、6月15日のW杯カタール大会アジア二次予選の最終戦キルギス戦(5-1)で終了した。

19日間で4大陸9カ国340人を受け入れ

 オンラインで総括会見を行った田嶋幸三会長が、「ここまで大変だとは・・・」と切り出した。FIFA(国際サッカー連盟)の規定で、男女とも6月15日まで「インターナショナルマッチデー」が設定されており、所属クラブはこの期間、選手を代表に出さなくてはならない。代表活動では、試合を組める貴重な強化機会でもある。

 「協会として色々な意味で高い授業料を払ったと思う。しかしパンデミックの中で試合を開催するため各国、国内では政府、スポーツ庁、保健所様々な箇所と連携して頂き、私も協会職員も学ぶ機会になった」

 田嶋会長はそう振り返る。

 ドドドド・・・はキャッチフレーズのはずが、想定外のハプニングや、その対応において協会職員、関係者にとっては連戦以前に「怒涛の毎日」となったようだ。

(1) 5月28日W杯アジア2次予選ミャンマー戦(千葉)
(2) 6月3日親善試合ジャマイカ戦(札幌)→ジャマイカが来日できず、日本代表対U-24の慈善試合に
(3) 5日親善試合U-24ガーナ戦(福岡)
(4) 7日W杯アジア2次予選タジキスタン戦(吹田)
(5)10日なでしこジャパン親善試合ウクライナ戦(広島)
(6)11日親善試合セルビア戦(神戸)
(7)12日U-24親善試合ジャマイカ戦(豊田)
(8)13日なでしこジャパン親善試合メキシコ戦(栃木)
(9)15日W杯アジア2次予選キルギス戦(吹田)

 アフリカからガーナ、欧州からウクライナ、セルビア、北中米はメキシコ、ジャマイカのほか、コロナ禍でW杯アジア2次予選が、急きょセントラル開催(一カ所で集中開催)に変更されたため、同予選に出場するミャンマー、タジキスタン、キルギス、モンゴルのアジア勢も集結。4大陸から8カ国、選手、同行関係者、審判などを合わせて340人を受け入れた。

 また試合会場は札幌、吹田、神戸、福岡と緊急事態宣言下、まん延防止等重点措置が発令されており、無観客試合も強いられた。

サッカーW杯2次予選 、キルギス代表を破った日本代表の選手たち= 2021年6月15日、パナソニックスタジアム吹田

陰性証明の不備から試合の変更、19人の濃厚接触者認定でGK不在の事態に

 ジャマイカ代表の来日時に、書類の不備でチームの半分が試合に間に合わない事態が起きた。同国は、2ルートに分かれて入国。アメリカルートの10人は無事入国したものの、欧州ルートの10人は、アムステルダムの空港で乗り継ぐ際、政府が指定する陰性証明書の不備が見つかり航空会社が搭乗を認めず、日本への到着リミット(試合前3日ルール)までに来日できなかった。

 協会は、札幌ドームで予定されていた親善試合を急きょ、五輪代表との「兄弟対決」に変更。試合を医療従事者へのチャリティマッチとし、地上波のテレビ中継(TBS)も予定通り放送された。

 感染予防ルールは国際的に統一されているわけではない。解釈によって検査方法、また搭乗する際の航空会社の対応にも違いがある。その場に専門家としての医師が帯同していたかどうかなど、契約書面だけでは分かり難い防疫、受け入れ態勢において、違いを知る結果となった。

 ジャマイカはその後、再検査を受けて入国し、豊田スタジアムでのU-24代表との試合を行っている。U-24ガーナ代表も、入国前検査(来日時、空港で行われる検査)で1人の陽性が判明したが、日本に移動中の機内で席を離した距離が判明したため、濃厚接触者は認定されていない。

 厳しい状況にも直面した。

 15日、W杯2次予選の最終戦を日本と戦ったキルギス代表は、入国後3日間連続で受けるPCR検査の初日に1人の陽性が判明。来日した選手、関係者39人中19人が濃厚接触者と指定され、このため選手5人が試合にエントリーできなくなってしまった。この5人のなかには、ゴールキーパー全員(3人)が含まれていた。

 感染者が出た場合、外界から遮断したバブルの中に、もうひとつのバブルを設けて感染拡大を防ぐ措置が取られる。キルギスはGK不在の緊急事態に、7日にモンゴルと対戦した際には、本来DFの選手がGKとして出場し、11日のミャンマー戦ではFWがGKとして起用された。

 15日の日本戦にはようやく本国から代わりのGKが来日した。厳格なルールに従い感染拡大は防いだが、最終予選出場に向けて、実力を発揮できなかった無念さは残っただろう。

サッカー協会は知見を、組織委員会にレポート

 協会の加藤秀樹広報部長は、「普段ならば、国際部とは仕事の関係がない部署も含め、総動員で対応した」と明かす。

 連戦中、チームには「リエゾン」(連携や連絡を意味するフランス語で、チームの窓口となる任務を指す)をそれぞれ置いて、バブルをいかに維持し、何か起きた場合に迅速に対応できるよう連絡を密にした。

 元名古屋グランパスエイトで、今回セルビアを率いて来日したストイコビッチ監督は、試合直後のインタビューで

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