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小山田圭吾氏の「虐め」はあまりにも残虐すぎる

過去の行為だからと許されないのはアスリートも裏方も必然

赤木智弘 フリーライター

 7月14日。東京オリンピック・パラリンピックの開会式、および閉会式のクリエイティブチームの布陣が発表された。

 その中に楽曲担当として、元フリッパーズ・ギターのメンバーで、今はCornelius名義でソロユニットを展開している小山田圭吾氏がいた。その途端にネットがざわつき、批判の声が上がった。

小山田圭吾氏=2006年10月11日、東京都目黒区

組織委員会は一体どんなリサーチをしたのか

 僕自身も最初にオリパラに小山田氏が関わっていると聞いて「え? なんで?」と思った。なぜなら僕も過去に小山田氏が障害者などを虐めていたという話を知っていたからだ。

 僕はフリッパーズ・ギターをまともに聞いたことはないし、知ったのは解散して小沢健二氏がソロで活躍するようになってからというくらいの人間で、90年代に青春を謳歌した世代ではあっても、別段当時の音楽に明るいわけでもない。しかし、それでも小山田氏が過去に酷い内容のイジメをしていたくらいの話は知っていた。そのくらいには有名な話だった。

 だから、オリパラ組織委員会が一体どういうリサーチをしたのかは分からないが、過去に障害者を虐めていたという経歴がハッキリしている人間を、障害者が主役であるはずのパラリンピックに起用するのか、意味が分からなかった。

 案の定、ネットで過去が拡散されて問題化。オリパラの醜聞としてニュースになり、テレビなどでも報じられた。

 そして小山田氏は7月16日、自身のTwitterに「東京2020オリンピック・パラリンピック大会における楽曲制作への参加につきまして」という文書を公開した。17日、オリパラ組織委員会の武藤敏郎事務総長が「十分謝罪し反省している。倫理観をもって仕事をしていく」として小山田氏を擁護した。19日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の高谷正哲スポークスパーソンは小山田氏を「高い倫理観を持って創作活動するクリエーターと考えている」とした上で、留任させると話していたが、同日、小山田氏が自身のTwitterで組織委員会に対して辞任の申し出をしたことを報告した。

 16日に最初に小山田氏が公開した文書は、僕には十分に反省をしているとは思えないものであった。

「直接謝罪したい」は虐める側に都合がいい考え方

 まず1つめに

 「学生当時、私が傷付けてしまったご本人に対しましては、大変今更ではありますが、連絡を取れる手段を探し、受け入れてもらえるのであれば、直接謝罪をしたいと思っております。」

 と、直接謝罪したい意向を示している。しかし、「直接謝罪したい」などと言うのは、まさに虐める側に都合のいい考え方である。

 虐めをした側が直接会って睨みを効かせれば、被害者は過去の恐怖から「謝罪を受け入れて水に流すことにOKをするしかない立場に追い込まれる」ことを理解しているからだ。そうした謝罪の場では被害者の思いや言葉はかき消され、ただ一方的に「加害者が許してもらえる」という加害者に有利なだけの精算が行われる。

 子供の頃に虐められていた人は、脳内お花畑教師が「はい、二人で握手して。もう虐めはしない、された方も恨まない。はいこれでお互い言いっこなし」などの腐った大岡裁きをすることで、自分の被害が「無かったことにされる」ことを経験しているだろう。直接謝罪とはこれと同じ意味を持つのである。

あまりに残虐すぎて「イジメ」という軽いカタカナ言葉ではくくれない

 そしてもう1つ、文中の「記事の内容につきましては、発売前の原稿確認ができなかったこともあり、事実と異なる内容も多く記載されておりますが」という一文である。

 この「原稿確認ができなかった」というのが、小山田氏の虐めの内容を含むインタビュー記事が掲載されたロッキングオンを指すのか、同じく記事が掲載されたクイックジャパンを指すのか、それとも他の媒体なのかは分からないが、少なくともこの一文が入ることによって「雑誌に掲載された内容は誇張されている」という言い訳ができてしまうのである。

 では実際にどのような虐めを行ったのか

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