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地震で停電した駅で「今なら痴漢できる」というサラリーマンがいる恐怖

赤木智弘 フリーライター

 10月7日夜に首都圏で震度5強の地震が発生した。地震の影響で発生した停電などにより電車の運行ダイヤは大幅に乱れ、駅には帰宅困難者があふれる事態となった。

 そんな中、とあるツイートを見かけた。

 それは「停電した駅にいると、サラリーマンが『今なら痴漢できるじゃん』と言っていたのが聞こえた」という内容だった。

 僕は善良な一般男性なので、多くの女性が困っている場面でまさか「痴漢ができる」と考える発想自体がないのだが、思うだけならまだしも、それを声に出して言うというのはあり得ない行為である。

 サラリーマンがどんな年齢だったかなどの描写はないものの、この男性はきっと同僚など仲の良い人と一緒にいたのだろう。大規模な停電という「非日常」で気持ちが高ぶって、ついしゃべってしまったのかも知れない。

 それでも痴漢という「犯罪行為」の可能性を、公衆の面前で堂々と口にするというのは、大人の態度として問題があることは言うまでもない。

運転再開を待つ人で混み合うJR池袋駅=2021年10月7日午後11時45分、JR池袋駅地震で運転が停まり、運転再開を待つ人たち=2021年10月7日23時45分、JR池袋駅

公共交通機関における男女の非対称性

首都圏の地震で電車が停まり、JR品川駅前でタクシーを待つ人たち=2021年10月7日、深夜0時55分首都圏の地震で電車が停まり、JR品川駅前でタクシーを待つ人たち=2021年10月7日、深夜0時55分

 今回の地震は22時41分という、終電も近くなった夜に発生した。昼間であればしばらく外で時間を潰すことはできても、夜では駅構内、もしくは駅の周辺にいる以外にどうしようもない。そうした状況で「停電だから痴漢ができる」という声が聞こえる距離にいる女性は、痴漢される不安に震えるしかなくなってしまっただろう。

 実際、痴漢の中には電車が停まったり遅延したりした路線で、運転再開直後の、非常に混み合ったぎゅうぎゅう詰めの車両を狙う者がいる。実際僕も、とんでもなく混み合った車両に何度か乗ったことがあるが、もう自分が触られていてもそれが誰かが分からない。仮に分かって文句を言ったところで「混み合ってるんだから仕方ないだろ!」と言われてしまえば終わりだ。これが痴漢だったとしたら、女性はほぼ泣き寝入りになってしまう。

 また、帰宅困難な女性を狙ってのナンパも発生していたと考えられる。こちらは決して犯罪ではないが、ただでさえ電車が動かなくて困っているときに、ナンパ師が身体目当てで寄ってくるのはウザくて仕方がないだろう。しつこい男はもちろん、中には断ると腹いせに暴言を吐く輩もいる。

 これも普段であれば、無視して歩き去ってしまえば良いが、タクシー待ちの列などでナンパされれば、その場を動けない。だから、暴言や暴力に至るかも知れない恐怖の中で、男が根負けするまで断ったり無視し続けなければならない。

 では、なんとかタクシーに乗れたとして女性はホッと一息付けるだろうか?

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