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「撮り鉄」が線路に転落。このままではホームでの撮影が禁止されてしまう

赤木智弘 フリーライター

 4月2日、JR東日本の八王子駅で列車を撮影していた男性がホーム下に転落してしまうという事故が発生した。

 事故当時は、列車の撮影を目的としたたくさんの列車ファン、いわゆる「撮り鉄」がホームに集まっていた。

 彼らの目当ては、4月2日と3日に八王子駅〜いわき駅間で運行される臨時急行「いわき」であった。濃いめのクリーム色に派手さを抑えた赤いライン、いわゆる「国鉄色」で登場したE653系を撮影しようと、八王子駅のホームは多くの撮り鉄で賑わっていた。

 男性が落ちた場所はちょうど階段脇で、ホームが狭くなっている場所であった。ちょうどそこは列車のフェイスを撮影できるポジションだったことから、撮影したい人が集中してしまった状況で転落してしまったようだ。

 幸い男性に怪我はなかったようだが、落ち方や打ち所によっては大事故に繋がりかねず、ネットでは「ホームでの撮影を禁止しろ」といった声も挙がっている。

このままでは「撮り鉄」で混雑するホームで大きな事故が起きかねない=2015年、 JR門司駅このままでは「撮り鉄」で混雑するホームで大きな事故が起きかねない=2015年、JR門司駅

問題行動を起こす撮り鉄も

 ネットなどでは以前から撮り鉄のマナーの悪さがあちこちで取り沙汰されてきた。

 今回のようにホームで大混雑を起こしたり、通りがかった乗客に罵声を浴びせたり、撮影者同士で場所取りをめぐってケンカをしたりする場面がネットにアップされている。

 駅の外でも、撮影したいからと他人の土地に無断侵入したり、線路に近づきすぎて列車の徐行運転を余儀なくさせたり、見た目が悪いからと保安のために刺さっていた杭を勝手に抜いたり、撮影ポイントに生えていた木を勝手に切ったり、といった問題行動があるという。

 果ては撮影ポイントの草を勝手に刈って「綺麗にしてやったから、ここから撮影するならカンパを支払え」などとほかの撮り鉄に言い出した例もある。

生け垣の3本の木が伐採され、切り株が残されていた(手前)=2021年4月12日午後1時21分、東京都八王子市西浅川町生け垣の3本の木が伐採されているのが見つかったJR中央線の撮影スポット=2021年4月12日、東京都八王子市西浅川町

沿線で「横須賀色」の115系電車を撮影しようとカメラを構える鉄道ファンら=2021年7月23日しなの鉄道沿線で「スカ色(横須賀色)」の115系電車を撮影しようとカメラを構える鉄道ファン=2021年7月
 最近の事例で言えば、2021年8月、江ノ島電鉄最古の現役車両である300形の試運転を撮影しようとしていた撮り鉄たちが、偶然車両と並行して自転車を走らせていた地元のメキシコ料理店店主を撮影の邪魔だとして罵倒するという事例があった。

 このように問題行動ばかりが注目されがちな撮り鉄だが、もちろん、ほとんどの撮り鉄はネットで騒がれるようなことはしていないはずだ。

 しかし、誰でも動画をインターネットに公開できる時代。100人のうち一人でも自分勝手な行動をする者がいれば、それがネットに晒されて、さも「撮り鉄の本性」であるかのように人々に記憶されてしまうのである。

重大事故が起きる前に

豪華寝台列車「瑞風」の一番列車を見送る大勢の鉄道ファン=2017年6月17日午前10時16分、JR大阪駅豪華寝台列車「瑞風」の一番列車を見送る大勢の鉄道ファン=2017年6月17日、JR大阪駅

 多くの撮り鉄はこう思っているだろう。「自分は迷惑をかける連中とは違って、ちゃんと周囲を確認して、迷惑にならないように撮影していたのだ」と。今回、八王子駅で発生した転落事故の写真をアップロードした人の中にも「自分は広い安全な場所で撮影していました」と主張する人がいた。

 しかし、不特定多数の人々が集まって撮影を始めた時点で、

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