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差別冊子をきっかけに考える神社とLGBTQの現在地

神道に性的少数者を否定する教えはないはずなのに

遠藤まめた 社会活動家

 自らもトランスジェンダー男性として性的マイノリティーの若者支援を中心に活動している遠藤まめたさんの連載「まめたの虹色時評」の3回目です。連載の感想や自分の体験を伝えたい、私も当事者として論じたいという方がいらっしゃいましたら、メールでinfo-ronza@asahi.comまでその感想や体験、論考をお送りいただければ幸いです。一部だけになりますが、論座でご紹介したいと思います。

(論座編集部)

 旧統一教会をめぐり連日たくさんの報道がなされている。高額な献金問題や、政治家への働きかけ。旧統一教会がLGBTQの権利を否定するような数々の活動を行ってきたことは、本連載の第1回「統一教会が繰り広げてきた反LGBT運動」(2022年07月23日付)でもとりあげた。

 宗教は本来であれば人を苦しみから解放する力を秘めているはずだ。それなのに昨今では、宗教が生んでいるたくさんの苦しみに注目が集まっている。

差別的な冊子の配布が波紋を広げた

 今年6月には、神道の政治組織である「神道政治連盟」がLGBTQについての差別的な冊子を発行し、それが自民党の勉強会で配布されたことがわかって大きな波紋を呼んだ()。

 (注)自民党の衆参議員も参加し、2022年6月13日に東京都内で開かれた「神道政治連盟国会議員懇談会」で、「同性愛は先天的なものではなく後天的な精神の障害、または依存症」「個人の強い意志で依存症から抜け出すことは可能」などと書かれた冊子が参加者に配られた。同連盟の研修会で大学教授らが夫婦別姓や同性婚についてした講演などをまとめた内容だという。

冊子議員懇談会で配布された冊子

 日本で生まれ育った多くの人にとって神社はとても身近な存在だ。お正月には初詣に行き、旅先では御朱印を押してもらったりもする。LGBTQの人々も同様だ。私はトランスジェンダー当事者だが、京都に行くたびに下鴨神社の近くに宿泊していて、境内を散策するのを楽しみにしている。そのようなかけがえのない時間が、自分のような人間が受け入れられるかどうかという「議論」によって傷つけられるのだとしたら、やっぱり嫌だなと感じる。

 宗教とLGBTQというテーマは壮大だ。西洋では長らく同性愛を否定する根拠としてキリスト教が用いられてきたが、昨今では神様の教えとして性の多様性を祝福する教会も増えた。仏教では、真宗大谷派などLGBTQの包摂に取り組む取り組みもある。それでは差別冊子で問題になった神道ではLGBTQについてどのように捉えているのだろう。

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