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世論調査は本当に害悪か?

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 私は、敢えて申し上げたい。「世論調査は害悪ではない」と。それは、次のいくつかの理由による。

リーダーの選定・育成のシステムの問題

 安倍、福田、麻生、鳩山、菅政権などこの何度かの政権交代が起きた大きな要因は、確かに内閣や政党の支持率に関する世論調査であったといえよう。しかし、そのもっと根底にあることを考えないといけないのではないか。

 1994年の法改正で衆議院選挙に小選挙区比例代表並行制、単純にいえばいわゆる小選挙区が導入され、96年の衆院選から実施された。その選挙制度の変化が政治リーダーの誕生の仕方を変えたのだ。

 55年体制時は、政権与党の自民党のリーダー(総裁、ひいては総理)は、中選挙区を基にしてつくられた派閥の長(リーダー)から選ばれた。議員は、まず派閥の他の同僚議員と切磋琢磨し、派閥の長となり、さらに派閥間で競争し、そこから自民党の長になるという、リーダーの選定と育成のシステムがあった。

 ところが、選挙制度が中選挙区制から小選挙区制に変わり、また派閥自体の弊害も生まれる中で、その選定・育成システムは徐々に機能しなくなった。その象徴が、2000年の森政権の誕生と2001年の退陣だった。本来は遅くともその際に、自民党は従来のシステムがすでに機能不全であることに気づくべきであった。そして小選挙区制になり、有権者・国民の意思も活かした、リーダーの選定・育成のシステムが必要であることに。ところが、2001年の小泉政権の誕生。小泉総理は、郵政選挙などに示されたように有権者の強力な支持を獲得し、衆議院選での大勝。この状況の中で、勝利の美酒に酔い、変化できなかった。その結果としての短命政権の繰り返しと自民党敗北による政権交代だった。

 このような現状は、実は民主党も何ら変わりないことが、短命の鳩山政権と急降下した菅政権でも判明した。

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