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「ねじれ国会」と参院の独自性

薬師寺克行

薬師寺克行 東洋大学社会学部教授

 参議院選挙の結果を受けて、メディアや論壇などの世界で「参議院改革論」が盛り上がってきた。

 論点は大きく2つに絞られている。1つは憲法改正などの制度改革を求める意見。京大教授の待鳥聡史氏は「予算関連法案や日銀総裁の国会同意人事など、内閣と衆議院の合意が存在すればそれが優越すべき政策課題については、参議院に対する衆議院の優越を制度的に確保するのが望ましい」(日経新聞2010年7月16日)と衆議院の優越性を確立すべきとしている。慶応大学準教授の細谷雄一氏の「与党は野党を交えて日本の議会制度、議院内閣制で参議院をどう位置付けるのか幅広く議論しなければいけない」(読売新聞 2010年7月13日)というのも同じ流れだろう。

 ねじれによる意思決定の停滞を回避するため、衆議院の優越性を憲法改正などで制度的に確立することは望ましいことではあるが、実現できるとしても何年もかかる話であり、目の前の問題解決には有効策となりえない。そこで、より現実的な対応として主要政策を中心に与野党が合意形成のための新しい枠組みを作るべきだという主張が出ている。元内閣官房副長官の古川貞次郎氏は「安易な数合わせではないルールを国会の中に作ってほしい。国会を駆け引きの場ではなく、本当に腰を据えた政策論議の場にするべきだ」(朝日新聞 2010年7月13日)と語っている。政党が政局優先ではなく、真剣に政策を議論し合意形成していくための制度を作るべきだという主張だ。

 菅首相が強調するように、日本は今、財政健全化、消費税を含む税制改革、社会保障制度の充実など大きな問題に直面している。では主要政党が重要な政策について合意を形成するという理性的な対応をするだろうか。政治の現場を見てきた経験からすると、とても楽観的にはなれない。

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