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地域政党、ホンモノはどれか?

菅沼栄一郎

菅沼栄一郎 朝日新聞記者(地域報道部)

 橋下徹・大阪府知事の「大阪維新の会」や河村たかし名古屋市長の「減税日本」の快進撃とも見える派手な立ち回りを眺めていて、本来の「地域政党」とは違うんじゃないか、と感じているのは私だけだろうか。

 東京・練馬区の私宅近くの駐車場に、区議とセットになった河村氏のポスターがぶらさがったのは、先月のことだった。「ねりま維新の会」とある。聞けば、区議は河村氏と共闘して練馬区長選に出馬予定だという。

 この候補が区長になれば、練馬区でも「10%減税」が実現するのだろうか。が、素直には頷けない。なぜなら、「本家」の名古屋市では10%減税の財源として185億円の行財政改革案をまとめたが、同時に1兆8千億円の借金を抱えて地方交付税の交付団体に転じた、と聞いたからだ。減税を先行させ、行政財改革を進めるテコにするという手法はなお検証が必要だ。

 消費税引き上げの議論が民主党政権をめぐる混乱で足踏みする間に、国と地方の借金が合わせて1000兆円規模になろうというときに、「減税」と言われても、マユにつばをつけたくなる。片山善博・総務相が言う「減税先行の行革は邪道」との批判も傾聴に値する。

 「ねりま維新の会」なる地域政党が、何人の党員がいるかどうかは不明だが、問題は「減税は邪道か正道か」などの党内議論がどれだけなされたのか、がまるで聞こえてこないことだ。「減税日本」は東京で、区議など100人程度の擁立を目指すそうだ。尾張の快進撃の噂を聞いて、東京でも「勝ち馬に乗りたい」というだけで共闘、推薦に飛びついた候補者がいるとするならば、見過ごすことはできない。

 大阪維新の会でも「大阪都の是非」をめぐる議論ははじめから論外のようだ。

 橋下氏と河村氏が主導するこの2つの地域政党は、このままいけば、2人の首長の政策を実現する「道具」として使われるだけで、終わってしまいかねない。議員定数削減など他の公約もあるようだが、仮にそれぞれの代表が辞めた後でも、議員らが独自の政策を繰り出していくことができる奥行きの深さが見えないのが心配だ。

 地域政党の「老舗」のひとつに「生活者ネット」がある。食の安全をはじめこの30年余り、地域に根を張った市民運動を続けてきた。今では、北海道から熊本県まで10の地域政党があり、朝日新聞(2月27日付朝刊)によると、昨年末で134人の地方議員が所属する。

 東京・生活者ネットワークの中村映子事務局長は、首長主導の地域政党について「首長をチェックする議会の役割を果たせるのか」と疑問を示し、次のように語る。

 「私たちは、地域の様々な問題をみんなで議論して、意見のデコボコをならしつつ合意点を見い出して政策をつくってきた。そうした手続きが、首長主導の地域政党には見えない」

 そうしたなか、知名度は低いが、「地域政党いわて」の活動には、将来の明かりが見える。

 岩手県議5人と市議1人が昨年4月に結成した小さな団体だが、「住民の縮図としての議会の実現」を掲げ、

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