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震災が露わにした民主党政権の限界

薬師寺克行

薬師寺克行 東洋大学社会学部教授

 菅首相に接する機会のある人たちから最近、相次いで「首相が変わった」という声を聞いた。「怒鳴ったり、細かいことを言ったりしなくなった」「官僚はじめ他の人の意見を落ち着いて聞くようになった」などというのだ。

 「イラ菅」と言われるほど気が短いこととともに、薬害エイズの情報を隠された厚相時代の経験もあって官僚嫌いで知られる菅首相だが、東日本大震災の被災者支援や被災地の復興、さらには今も放射能漏れを続ける原発事故の深刻さを前に、さすがに自分1人では対応しきれないということを認識したのか、あるいは、官僚機構が動かなければ物事は進まないということを実感したのだろう。

 震災直後からしばらく、とにかく菅首相の評判は悪かった。批判のポイントを列挙すると以下のようになる。

緊急災害対策本部での菅直人首相(右手前から2人目)=首相官邸
 まず、組織いじりと人事の乱発だ。政府内に「被災者生活支援特別対策本部」「原子力被災者生活支援チーム」「電力需要緊急対策本部」などなど約20もの新しい組織を次々と作った。また、原子力工学の専門家らを相次いで内閣参与などに起用した。

 いかにも場当たり的な印象を与えるがマイナスはそればかりではない。組織いじりや人事は既存の組織や担当者の否定であり、当事者にすれば「おまえはだめだ」と言われているに等しい。当然、首相官邸や各省の幹部官僚の間にはしらけた空気が漂った。そればかりか新たな組織発足や人事のたびに官僚機構はゼロから作業をスタートしなければならす、余計な時間と労力を要した。

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