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叶わなかった? 金正日の「駆け込み訴え」

小北清人

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 視察に訪れたスーパーの食品売り場では1人で歩くことが出来ず、同行した揚州市長に右手を介添えしてもらい、やっとのことで歩いていた。宿泊した迎賓館ではカート(ゴルフ場などで使われる小型の車)に乗って移動していた――。

 目撃したスーパーの店員やホテル従業員の語る「中国での金正日(キム・ジョンイル)の姿」である。今回の非公式訪中、ホテル前などで垣間見えた姿を一瞬キャッチしたテレビの映像では意外に元気そうにも見えたが、日に日に足が弱ってきているようだ。そのテレビの映像にしても、何かあったら手を差し伸べようとする周囲のこわごわとした空気が伝わってくる。

 腎臓透析を受けていると、骨がもろくなりやすいという。金正日氏は歩くのも辛くなっているだろう。5月20日に専用列車で中国に入り、中国東北部を回った後、上海近くの揚州まで南下、さらに北京まで北上する強行軍。北京入りするまで宿舎泊は揚州だけで、あとは専用列車に泊まった。車内には透析の機器もあるだろう。動くのも難儀な69歳(公式には)の彼には、むしろホテル並みの専用列車で昼夜過ごす方が楽だったはずだ。立ち寄った視察地では車列に救急車も含まれていたという。

 3年前の8月には脳卒中で倒れ、心臓病にも糖尿病にも苦しんでいる。まさに満身創痍といっていい。

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