メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

韓国の海賊裁判で見えてきた課題

小谷哲男

小谷哲男 小谷哲男(NPO法人岡崎研究所特別研究員)

 筆者は4月29日付のWEBRONZA上で、ソマリアの海賊を裁判員裁判で裁く課題として法廷通訳の確保、被告人の年齢、動機の解明等を列挙した。5月27日に韓国の国民参与裁判で海賊に対する判決が行われたが、その内容が参考になるので、以下で検討してみたい。

 1月15日に韓国のケミカルタンカー「三湖ジュエリー」号がアデン湾で海賊に襲われたが、21日に韓国海軍が「アデン湾の黎明」作戦で同船を解放、13人の海賊のうち8人を射殺、5人を拘束し、人質となった乗組員21人を救出した。拘束された5人は韓国に移送され、船の乗っ取り、金品の強奪、身代金要求、脅迫、暴行、殺害未遂など8種類の罪で起訴された。海上での強盗殺害未遂は最高刑が死刑であり、2008年に試験的に開始された国民参与裁判で裁かれることとなった。

 今回の陪審員は釜山市民から選ばれた女性7名、男性5名の計12名で、そのうち3名は予備陪審員であった。日本の裁判員裁判制度とは異なり、韓国の制度では陪審員は全員一致で有罪か無罪かを決めるだけで量刑判断は行わない。また、裁判官も陪審員の評決に影響される必要はないが、実際には裁判官が陪審員の評決を無視することは難しいとされる。

・・・ログインして読む
(残り:約1533文字/本文:約2043文字)