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正当性が失われた首相に解散権はない

後藤謙次

後藤謙次 後藤謙次(フリーの政治コラムニスト、共同通信客員論説委員)

 退陣を表明した首相が解散の影をちらつかせて延命を図る。菅直人首相ほど衆院解散権を弄んだ首相を知らない。

記者会見で、退陣についての条件を明らかにした菅直人首相=6月27日夜、首相官邸で
 解散権は首相の政治権力を裏付ける最大の拠りどころだ。その行使によって一挙に全衆院議員が身分を失い、国家の基本方針が一変する。それだけに解散権を手にした首相はその権限に対して謙虚でなければならない。解散権の乱用は「恫喝民主主義」に直結する。

 竹下登元首相は解散権についてしばしばこう語っていた。

 「首相の衆院解散と日銀総裁の公定歩合の変更については本当のことを言わなくてもいい」

 竹下語録は解散権が首相の専権事項であること指摘しながら同時に、「本当のことを言わなくてもいい」というところに最大のポイントがあった。「ウソをついていいということではない」と竹下氏が力説していたのを思い出す。多くの歴代首相も解散の時期について問われると、異口同音に「今は考えていない」と答えるのが、ある種の政界の常識になっていた。ひとたび「解散を考えている」と答えれば、その瞬間に政治は後戻りできなくなるからだ。

 逆に解散権に触れることが命取りになった首相もいる。

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