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北朝鮮の食糧難(2)――いよいよ瀬戸際の配給制度

石丸次郎

石丸次郎 石丸次郎(ジャーナリスト/アジアプレス)

 欧州連合(EU)が北朝鮮への緊急食糧支援を決めた。1000万ユーロ(約11億7000万円)を拠出して世界食糧計画(WFP)と協力し、子供など社会的弱者約65万人に向けて計2万トンの米や大豆、トウモロコシを4~6カ月間かけて供給するという。

 支援がもっとも困難な人々に届くことを願わんばかりだ。

平均的な庶民の食卓を再現してもらった。並ぶおかずは、野菜を味噌であえたもの(右)と、塩(左)ぐらいだという=2011年3月、両江道恵山(ヘサン)市、撮影・崔敬玉(チェ・ギョンオク)/アジアプレス
 さて、人道支援団体や国連機関からよく語られるのが、

 「北朝鮮国民の大半は配給制度によって食糧にアクセスしており、食糧難によってその配給量が大幅に減っている」

 という説明である。

 これは、はっきり言って間違いである。北朝鮮で食糧配給制がシステムとして稼働していたのは90年代初頭までの話である。

 現在、不充分ながらも食糧配給の対象となっているのは、後述するが、人口の20%程度に過ぎないと筆者は見ている。

 北朝鮮は「配給労働制」を採って来た。

 国民が現金で食糧を購入することを許さず、労働の対価として食糧を支給してきた(現金支給は微々たるものに過ぎなかった)。

 これは、「食べ物をやるからいうことを聞け」という胃袋を人質にした労働制度だ。それを支えてきたのは、政府権力による「カロリーの一元管理」であった。つまり、国家や機関による配給以外に、食糧入手の手段を徹底して取り締まったのである。

 例外は、小さな自留地で生産される野菜やタマゴ程度で、食糧は個人による売買が厳しく統制された。

 民衆は、家族を養い胃袋を満たすために、毎月二度与えられる配給を待つ他なかったのである。

 ところが、

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