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「日韓対等時代」がもたらした宿命的摩擦(下)――ガチの「ぶつかり合い」が増えていく?

小北清人

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 こうして、実効支配する側の韓国だけが騒ぎに騒ぎ、島を占拠されているはずの日本は騒ぎのたびに義務的(?)にそれとなく抗議するだけという、まるで漫画のようなパターンが作られるようになりました。

 韓国大統領にとって「独島」は政権末期に支持率が下がったときの定番の人気回復策のようなものになります。なにせ現実に支配しているのは韓国ですから、何かをきっかけに盛り上げて見せて、「断固死守する!」と警戒態勢を強化する。死守するも何も、日本側が「奪還」の動きを見せたことなど一度もない。これほど気楽な「安保政治」はない。「絶対に勝つ筋書きができている独り相撲」のようなものです。「初の文民政権」と呼ばれた金泳三(キム・ヨンサム)大統領(93~98)や、バリバリの左派だった盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領(2003~08)は、日本に対してはそんなことばかりやっていた感があります。

 でも、多くの日本人にとっては、韓国がいくら騒ごうと、ある意味、どうでもよかったのです。なぜなら関心そのものがないから。実効支配しているのは韓国だし、今日明日にどうなるものでもない。国民に関心がないのだから、日本外務省もある意味、楽だったでしょう。「日韓の喉に刺さったトゲは、そのままにしておくに限る。竹島でこじれると、日韓関係を大きく損ないかねない。穏便が一番。それが大人の知恵というものだ」。そんな認識だったのではないでしょうか。

 ところが21世紀となり、徐々に「日韓対等時代」となっていくにつれ、これまで韓国に関心のなかった日本人までが隣国に興味を持ちだしました。韓国製品や大衆文化がどんどん日本に入ってくる。それを熱烈に好きになる人もいれば猛烈に嫌いになる人も出てきました。インターネットの発展で、隣国の出来事をリアルタイムで、しかも詳細に知ることができるようになります。刺激的な話であればあるほど盛り上がる。「もうひとつの巨大な世論の場」にネットは成長しました。

 日韓それぞれの情報が瞬時に相手に伝わり、さまざまな渦を巻き起こす。渦は政府の思惑や大手マスコミ報道の予想を越えて広がり、ことによっては大騒ぎにもなる。「大人の知恵」という名のハンディキャップマッチは通じません。正面衝突、ガチンコでぶつかることが歓迎されていきます。

 韓国ネットでの「反日」、日本ネットでの「嫌韓」の盛り上がりは周知のことでしょう。2010年3月1日(韓国では抗日独立運動記念日で祝日)には韓国の反日ネットグループとその賛同者たちが日本の「2ちゃんねる」へのアクセスを猛烈に繰り返し、サーバーをダウンさせる「反日サイバーテロ」を行いました。ちなみに今年8月15日にはなぜか

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