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「大きな社会」構想の道半ばにして、イギリス社会は壊れてしまった…

脇阪紀行

脇阪紀行 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

 「英国は大きなギャンブルを始めた。いずれ他の先進国も同じことに挑まねばならないだろう」。英エコノミスト誌が、キャメロン政権による大胆な財政再建策をこう評したのが、2010年8月だった。あれから1年、ロンドンをはじめ各都市に吹き荒れた若者たちの暴動は、英国社会の土台にあった信頼と連帯がもろくも崩れ、人々の間の絆も断ち切られつつあることを示した。

 暴動が一段落した15日、キャメロン首相が地元で行った演説が印象的だ。

「(暴動の最中)誰もの頭に浮かんだ疑問がある。『親たちはどこにいるんだ』。なぜ若者たちはあんなひどい行動に及んだのか。家に誰もいず、面倒を見ない。彼らは自分を見失ったのか」

「壊れた社会(Broken Society)」の修復と再建が、「私の政治課題の最上位にある。問題を抱えた12万の家族の生活を変えていく。任期中にその目標を実現したい」

 キャメロン氏は、暴動への怒りをあらわにして、砲火や略奪に加わった若者たちを「犯罪者」と呼び、参加者全員の摘発を警察に命じた。問題を抱えた12万の家族とは、失業や麻薬、アルコール中毒、貧困などなんらかの問題を持つ家族のことだという。

 逮捕者は1800人をはるかに超えているという。ただ暴動参加者の実像はまだ明確ではない。多くは

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