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壮大な「未完」の政権――菅さんはけんか師ではあっても仕事師ではなかった

小沢秀行

小沢秀行

 菅政権とは、一言で言えば、壮大な「未完」の政権と言えるのではないでしょうか。

 税と社会保障の一体改革、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加、脱原発、脱小沢――。掲げた政策や政治姿勢は、基本的に正しかったと思うのですが、ひとつとしてやり遂げることなく、次の首相に後事を託すことになりました。

 いずれ実を結べば、言い出しっぺとして評価されることもありましょうが、そうならなければ、単に「東日本大震災の時に首相だった人」で終わってしまうかもしれません。

 それどころか、次の首相が民主党政権の立て直しに失敗し、次の総選挙で民主党が再び野党に転落するようなことになれば、「政権交代の失敗を決定づけた首相」という烙印を押されかねません。

 「未完」の理由は大きく分けて、二つあります。政治構造の問題と、菅さんの資質の問題です。もちろん、1年余りで退陣を余儀なくされたことで、時間が足りなかったという面はあります。

 政治構造という点では、政権発足直後の参院選で民主党が惨敗したことが、すべてのつまずきの始まりでした。ねじれ国会で野党との対立が先鋭化したというだけではなく、菅さんが敗北の責任をとらずに首相を続投したため、小沢・鳩山グループを中心とした党内の反菅勢力との対立が決定的になったからです。

 この「前門の野党、後門の小沢・鳩山グループ」という基本構図は、昨年秋の党代表選での一騎打ちで小沢氏を退けた後も何ら変わることなく、最後まで菅さんの政策遂行の足を引っ張ったのです。

 野党との健全な協力関係を築けず、足元の党内ひとつまとめきれなかったことについては、菅さんの資質にも問題なしとはいえないでしょう。

 参院選後、事実上年明けまで消費税論議を「封印」したり、大震災が起こると、TPPはあっさり先送りし、一体改革の最終案とりまとめにも熱意を示さなかったりといった様子を見せられると、こんな疑念も拭い切れません。

 菅さんは本当に信念を持って、これらの政策をやり遂げようとしていたのだろうか。政権維持のために、その場その場で、メディアや世論に受けるテーマを食い散らかしていただけではないか。

 仕事はやり遂げてなんぼのものですから、菅さんは結局、

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