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北朝鮮の食糧難(最終回)――食糧支援を有効なものにするために

石丸次郎

石丸次郎 石丸次郎(ジャーナリスト/アジアプレス)

 8月末の金正日総書記の訪露に合わせるように、ロシアは小麦粉5万トンの食糧支援を開始した。7―8月の集中豪雨に対する国際社会の人道支援も始まっている。支援が必要とする人のもとに早く届くことを願いたい。

 北朝鮮政府には、体制維持のために何とかして食糧を配給したい「優先配給対象」があることは述べた。軍隊、警察、保衛部(情報機関)、党と行政機関の幹部、インテリ、一部の優良炭鉱・鉱山、軍需産業など政府が稼働させることを最重視している企業所の従業員とその扶養家族、そして平壌市民の一部などだ(現在、この「優先配給対象」に対しても食糧が供給できないでいることは言及した)。

家も職も失い「コチェビ(ホームレス)」となった、平安北道のとある炭鉱町の40代の男性。普段は落ちている石炭を集め、売ることで生活の糧を得ているという=2011年2月、撮影・金東哲(キム・ドンチョル)

 一方、支援する側の国際社会には「優先支援対象」がある。言うまでもなく、もっとも困難な人たちから順に支援を届けたいわけである。

 とすれば、「優先支援対象」は政権による収奪に喘ぐ農民たち、ジャンマダン(市場)で日銭を稼いでなんとか延命している人たち、そしてコチェビ(ホームレス)など都市の弱者たち、そして乳幼児や妊産婦であるべきだ。このたびの水害被害者も、当然「優先支援対象」となる。

 支援食糧が入ったら、北朝鮮政府は当然、「優先配給対象」から配りたいと考えるだろう。

 国際社会と金正日政権とでは、この「優先順位」のつけ方が大きく異なっている。

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