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民主主義神話と普天間問題――「強行派」の暴走を封じ込めよ

佐藤優 作家、元外務省主任分析官

 どの国家も、その国家が成り立つための神話がある。日本ならば、古事記、日本書紀などに記されたいにしえからの神話がある。ヨーロッパ諸国やロシアもいにしえからの建国神話をもつ。これに対して、近世になってから成立したアメリカ合衆国(米国)の神話は、常に生成途上にあり、変容する。

 米国の宗教社会学者ロバート・ベラーは、米国の市民宗教がこのような国家神話であると考える。米国大統領は、神(God)についてよく言及するが、キリスト(Christ)について語ることはほとんどない。要するに、ユダヤ教徒とキリスト教徒が共通して承認することができる超越的なるものを承認することが、米国の国家神話なのである。この国家神話は時代を経るとともに宗教色を薄め、世俗化していった。そして、それは民主主義という名を取るようになった。民意によって決定された事柄は、米国人にとって超越的なのである。

 3・11米国同時多発テロに対する戦い、対イラク戦争、ウサマ・ビン・ラディン殺害作戦においても「民主主義を擁護するため」という大義名分が、米国人の集合的無意識をつかんだのである。日米同盟を深化させるためにも、民主主義という米国の国家神話を正しく理解することが不可欠だ。

 野田新政権が成立すると同時に、防衛官僚が米海兵隊普天間飛行場の辺野古(沖縄県名護市)への移設を強行しようとしている。防衛官僚が、沖縄の民意を無視し、力で問題を解決しようとすると、流血の自体が生じる危険がある。その結果、革新陣営だけでなく保守陣営、経済界を含めたオール沖縄での「島ぐるみ闘争」が始まる。

 その結果、

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