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アラブの民主化をリードできない米国の弱み

春名幹男 早稲田大学客員教授(米政治安保、インテリジェンス)

 日本の識者には、米国は「アラブの春」を全く予想できなかった、などと言う人が多い。しかし、その見方は正しくない。

 実は、オバマ米政権は2011年8月、「大統領検討指令」(PSD)という文書を発令し、国務省などの関係省庁に対して、アラブ世界の不穏な動きにどう対応すべきか、報告するよう求めた。

 その事実は2011年2月16日付のニューヨーク・タイムズ紙が報道した。国家安全保障関係の米機密文書に関する情報を集約している全米科学者連盟(FAS)によると、この文書は正確には2010年8月12日付でオバマ大統領が発したもので、「中東・北アフリカの政治改革」をテーマにした、未公表のPSD11文書、とみられている。

 米政府のこうした動きを察知してか、米国で最も影響力があるシンクタンク「外交関係評議会」が発行する外交誌「フォーリン・アフェアーズ」は2010年9・10月号で「中東改造」を特集した。

 この大統領指令を受けて、国家安全保障会議(NSC)のデニス・ロス上級部長らをまとめ役に国務省、米中央情報局(CIA)などの省庁幹部が毎週ホワイトハウスで協議を重ねた。

 大統領自身は、中東の大国エジプトの動向を最も気にかけ、独裁者ムバラク大統領の打倒を求めて立ち上がった市民を支持した。

 しかし、アラブの親米政権については、米国が抱える戦略的利益の維持と、政権打倒に伴う混乱の回避、という複雑に絡む問題にどう対応すべきか、困惑した。

 ロス部長らがまとめた文書は、エジプト、ヨルダン、バーレーン、イエメン4カ国の情勢への対応策について詳述しているといわれる。しかし、

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