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オバマ政権がイスラエルにバンカーバスター売却のナゾ

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 9月24日に放送されたアメリカのナショナル・パブリック・ラジオのニュース番組で『ニューズウィーク』誌のエリー・レイク記者が語ったところでは、2009年にオバマ政権が秘密裏に55発の地下壕破壊用の新型爆弾を売却していた。

 この種の爆弾は、軍事専門家の間ではバンカーバスターとして知られ「地中貫通爆弾」との訳語が当てられている。オバマ政権が売却したのは最新のバンカーバスターで約7メートルの厚さのコンクリートを貫通する能力がある。仮にイスラエルやアメリカがイランを攻撃することになれば、地下深く建設されている核関連施設への爆撃に使用されるのではないかと推測されている兵器である。

 レイク記者によれば、この爆弾は2005年にイスラエルのオルメルト首相が購入を希望し、それをブッシュ政権が拒絶している。ブッシュ政権がバンカーバスターの売却を拒絶したのは、軍事技術のイスラエルから中国への流出をアメリカが懸念していたからだ。この問題が解決されたので、2007年にはブッシュ政権はバンカーバスターの売却を許可した。2007年、ブッシュはオルメルトに秘密裏に書簡を送り、この爆弾100発の売却の決定を伝えている。しかし実際の売却は先送りされた。

 そして2009年の政権発足直後にオバマは55発の爆弾を売却した。これが公表されなかった理由は、オバマ政権がイランとの対話を模索していたからである。また公然たる売却は、オルメルトの後に首相となったネタニヤフに間違ったメッセージを送る結果になると判断されたからである。つまりイスラエルによるイラン攻撃をアメリカが容認すると解釈されるとの懸念があったからである。

 これ以上はありえないほどのイスラエル寄りであったブッシュ政権でさえ売却しなかった兵器を、オバマがイスラエルに売却していたとのニュースはスクープである。

 しかし、多くの疑問が残る。

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