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民主党分裂と原発問題(上)――小沢新党は「民主本党」になれるか?

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

 7月2日、小沢一郎氏ら衆参50人の議員は離党届を党執行部に提出し、近く新党を結成するという。その新党は衆議院では二大政党に次ぐ規模になるだろうから、その政治的な意味は大きい。

 その前日、7月1日には、菅内閣が成立させた自然エネルギーの固定価格買い取り制度が始まった一方で、野田政権の決定によって大飯原発が再稼働した。そして、官邸前では、6月29日にそれに反対するデモが自然発生的に大きくなり、数万人とも20万人とも言われる多くの人びとが抗議の意志を表示した。日本では異例なこの大規模デモは「紫陽花革命」とも言われている。日本政治は激動の時に入ったと言えよう。 

 小沢氏は、消費税増税への反対という主張を「国民のための正義だと思っている」と話した(6月22日)。「正義」という言葉が、ハーバード白熱教室から始まって、いよいよ政治の世界にも浸透してきたようだ。正義ならば、目先の損得勘定を離れて、その正義を実現させなければならない。離党という行動はその意味では筋が通っている。しからば、原発再稼働は正義に適うのだろうか、どうだろうか? これを7月5日夜の「WEBRONZA白熱教室」で論じてみたい。

 私は、「歓迎すべき民主党分裂――政治改革の失敗と小沢一郎」で述べたように、民主党の分裂は民主主義の機能回復や政党政治の観点から望ましいと考えている。自民党と民主党・野田政権が消費税増税で一致したように、二大政党の政策が近似してしまったため、人びとの意見が大きく対立する争点について大政党が代表して議論し、より良い決定に至るという可能性が減少してしまっているからであり、この事態が放置されると民主主義や政党政治の危機が生じかねないからである。

 そこで、小沢一郎新党に問われるのは、

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