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イスラエル人を狙ったテロは「ミュンヘン五輪」を思い出させる

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 7月18日、ブルガリアのリゾート地でイスラエル人観光客らが乗ったバスが爆破された。この事件で、5人のイスラエル人を含む7人が死亡し、37人が負傷した。

 その直後にイスラエルのネタニヤフ首相そしてバラク国防相が、イランによるテロと断定した。また同首相は報復を示唆した。世界の目がシリアに集まるなか、このテロを口実にイスラエルがイランに対して何らかの行動を起こすのではないかと予想される。

 この2年の間にイスラエルのイランに対する低レベルでの戦争が続いている。アメリカと協力してのイランの原子力施設に対するコンピューター・ウィルスによる攻撃が行われた。軍事施設の爆破や核開発に従事している軍関係者や民間の科学者の暗殺が続いている。

 爆破や暗殺は、おそらくイスラエルが単独で実行した作戦であろう。アメリカは、イランが挑発されて大規模なテロを起こすことを懸念している。それが戦争を誘発するのを恐れてである。そのためイラン人科学者の暗殺をヒラリー・クリントン国務長官が激しく非難した。これは、アメリカが関与していない事実を強調して、イランの暴発を押さえる狙いからの発言であったろう。

 暴発ではないが、イランの報復と思われる事件が起こり始めた。今年に入って、アゼルバイジャン、タイ、インドなどでイスラエルの外交官と家族を狙ったテロやテロ未遂が発生した。いずれもイランの諜報機関の仕業との見方が広まっている。またケニアでイランの諜報関係者と思われる人物が拘束された。

 今年2月のインドでのイスラエル大使夫人に対するテロ未遂の手口が興味を引く。犯人は、同夫人の車にオートバイで近づいて

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