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ラマダンと五輪――イスラム教徒の選手はどうするのか

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 イスラム教の断食月であるラマダンが始まった。信者は、約1カ月にわたり日中は飲食をしない。食事はおろか、水も飲まない。今年のラマダンは地域にもよるが、およそ7月20日に始まった。そして8月18日前後に終了する。

 今年のロンドン・オリンピックの開会式は7月27日に行われる。しかし実際の競技は開会式を待たずに始まる。25日に、まずサッカーの試合が始まった。競技は8月12日の閉会式まで続く。オリンピックが、すっぽりとラマダンの期間に入っている。

 イスラム教徒の選手たちは、どうするのだろうか。対応が分かれている。一部には宗教的な義務を優先する選手がいる。オリンピック期間といえども、日中は水さえのまずに練習し試合でベストを尽くす決意である。

 多くは、オリンピック期間中は断食をせずに、その後に断食するようである。イスラムは、旅行者にはラマダンの義務の延期を認めている。大半の選手が世界各地からロンドンへ旅行するのであるから、このカテゴリーに入る。仮にロンドンに住んでいるイスラム教徒の選手といえども、オリンピック村に入れば「旅行者」であろう。

 イスラム諸国から多くの選手がオリンピックに出場する。どの国も政府として断食を選手に求めてはいないようである。それぞれの信徒と神との間の個人的な問題として、とらえられているようである。ラマダンを守る選手が、守らない選手を批判するということも、ないようである。個人個人の厳粛な決断を相互に尊重しあう姿勢のようだ。

 それにしても、なぜオリンピックがラマダンとぶつかってしまったのだろうか。

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